こんばん、doctorKです。
今回はなぜお薬手帳が必要なのかについて解説していきます。
お薬手帳が使われるようになった理由
今ではお薬手帳を持ってはいなくても、どんな用途の物かほとんどの人は分かるかと思います。
しかし、その歴史は意外と浅く、約25年前の1993年、日本国内の患者15人が異なる病院から抗ウイルス剤と抗癌剤を処方され、それら薬剤を併用して死亡した事件(ソリブジン事件)を契機に導入されました 。
お薬手帳に書いてあること
お薬手帳には書いてあることを今更確認する必要はないかもしれませんが、その中身は大きく3つに分けられます。
- 患者さんの住所などの基本情報
- アレルギー歴・既往歴
- 処方歴(病院名、薬剤名とその用法用量など)
②について言えば、問診でアレルギー、既往歴ありの患者さんであっても、この欄に一部のアレルギー歴や既往歴しか書いていなかったり、そもそもその存在を知らなかったりします。
そして、何より③が先ほどのソリブジン事件対策であり、多くの方が「お薬手帳」といえば処方歴をまず頭に思い浮かべるでしょう。
先ほど述べたように、この処方歴には処方された月日や病院名、医師名、薬剤名とその用法用量などが書かれています。
なぜお薬手帳を持っていた方が良いのか
なぜお薬手帳を持っていた方が良いのでしょうか?その理由は全部で5つあると僕は考えています。
1.同じお薬を処方できる
お薬手帳では今までの処方されたお薬の処方歴が添付されています。
仮に急遽、出先の病院で入院することになってしまい、お薬を余分に持っていなかったとしても、お薬手帳を見れば同じようなお薬を出すことができます。
ここで、「同じような」と言ったのは、病院によってお薬の採用が異なるからです。
似た効果のあるお薬は何十種類も存在しますが、それら全てを病院内に保管するのはコスト的にもったいないからです。
もう一つ、同じ薬を出せるメリットがあります。それはその薬が効果的だったのか、効果的ではなかったのかが分かり、無駄な時間を取らずに済むということです。
患者さんの中には「今まで飲んでた薬が良く効く」あるいは「今まで飲んでた薬はあまり効いている気がしない」などと言います。同じ薬を処方することで効果的なお薬をお出しすることができます。
2.お薬のアレルギーが分かる
お薬手帳の役割②に書いたように、お薬手帳には今までのアレルギー歴を書く欄があります。
アレルギーと一口に言っても、お腹が緩くなるという軽いものから、アナフィラキシーという生命に関わるものまで様々です。
このアレルギー情報を問診で聞きますが、認知症で記憶が曖昧な方などでは参考にすることもあります。
3.お薬の相互作用による影響を未然に防ぐことができる
お薬の中には、お薬同士で互いの効果を打ち消してしまうものがあったり、逆に、効果を過剰にしてしまうものがあります。
これを相互作用と言いますが、この相互作用を起こさないように、似た効果のあるお薬に変更した経験もあります。
4.病気を推測できる
患者さんの中には病気を病気だと思っていない方もいらっしゃいます。
よくあるのが問診票の既往歴に記載がない患者さんに「高血圧はありますか?」と聞くと、「ありません」と答えた後、お薬手帳を見ると高血圧のお薬を飲んでいることは少なくないです。
このように、お薬の内容から病気を推測することもできます。
5.かかりつけ病院が分かる
処方歴にはそのお薬を処方した病院が必ず書いてあります。今までの経過が重要になる病気の場合、その病院に問い合わせることもあります。
このように、お薬手帳には処方されたお薬だけでなく、患者さんの病歴から処方歴などが記載されており、誤ったお薬の処方を未然に防ぐ手帳になっています。
お薬手帳アプリのススメ

皆さんはお薬手帳を何冊お持ちですか?
まだ1冊しかない方は構いませんが、ご高齢になられるとお薬手帳2冊、3冊お持ちの方がいらっしゃいます。そして、よくあるのが
「お薬手帳、前のを持ってきてしまった」
です。病院やお薬が特に変わっていなければ構わないのですが、病院を変えていたり、新しい薬を処方されていると、お薬手帳の意味がなくなってしまいます。
そこで、お勧めがお薬手帳のアプリです。アプリでは処方の管理が可能ですし、万が一お薬手帳を忘れてもスマホは常に携帯してると思うので安心です。
とはいえ、スマホアプリにも弱点があります。それは急変などで患者さんと意思疎通が取れない時、スマホアプリを持っているかどうか不明であり、スマホのロックを解除できない恐れもあります。
おわりに
お薬手帳をなんとなくお持ちの方、そもそもお薬手帳なんて持っていない方もいらっしゃるでしょう。
お薬手帳は常に携帯し、万が一病院を受診することがあれば、それは非常に有用な情報になります。
もしもお薬手帳を持つのが億劫であれば、スマホアプリを利用するなど工夫するのが良いかもしれません。
僕たち医師はお薬手帳を意外と見ていますし、重要な情報を見つけることもあります。
この記事を読んだ方は今すぐにお薬手帳があるか、なければすぐにスマホアプリをダウンロードすることをお勧めします。
それではまた次回の記事でお会いしましょう!
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