落屑緑内障とは
瞳孔縁、水晶体表面に特徴的な落屑物質がみられる落屑症候群に伴う続発開放隅角緑内障である。落屑症候群は高齢者に多く、70歳以上の約4%に認め、その20~40%に緑内障を合併する。
眼圧上昇は落屑物質が線維柱帯に沈着し房水流出抵抗が増大することが主な原因とされている。その他にも、線維柱帯細胞でも落屑物質が産生され、色素顆粒が線維柱帯細胞に貪食され、弾性線維の生合成阻害による細胞外マトリックスの異常沈着などが関与する。
落屑緑内障の診断
細隙灯顕微鏡により瞳孔縁あるいは水晶体表面に付着する落屑物質を確認することで診断可能とされる。
落屑物質は
- central disc :水晶体表面にある、瞳孔付近の落屑物質
- peripheral band:水晶体表面にある、周辺部の落屑物質
- intermediate zone:central discとperipheral band間の落屑物質を認めない領域
時にcetral discは欠くが、peripheral bandは全例にあり散瞳して初めて確認されることもある。
隅角検査では、高度の色素沈着とSchwalbe線を越える波状の色素沈着(Sampaolesi線)が特徴的である。
また、落屑症候群はZinn小帯が脆弱であったり、散瞳が不良であったりすることが多い。Zinn小帯の脆弱性のため、水晶体が前方偏位し、閉塞隅角緑内障をきたす場合もあり、さらに散瞳によって色素が散布され、眼圧が急激に上昇する場合がある。
落屑緑内障の治療
1.薬物治療
基本は原発開放隅角緑内障に準じ、視機能、視野障害の程度により眼圧下降を図る。その眼圧下降のために点眼液を使用する。
2.外科的治療
アルゴンレーザー線維柱帯形成術(ALT)やNd-YAGレーザーを用いた選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)が比較的奏効するとされているが、長期的効果はあまり期待できない。そのため、十分な眼圧下降のため線維柱帯切除術あるいは線維柱帯切開術を選択する。
白内障手術では散瞳不良、Zinn小帯の脆弱化または断裂、高度の核硬化などを伴うことが多く、手術の難易度は高くなる。
落屑緑内障の予後
POAGに比べ眼圧レベルも高く、進行傾向が強く予後不良例が少なくない。眼圧の変動が大きな例は特に注意し、早期から積極的な治療介入が必要である。