Aモード超音波検査法による眼軸長測定
Aモード超音波検査法による眼軸長測定とは
- 目的:軸性遠視・近視の診断や眼内レンズ度数計算のために行われる。
- 対象:高度遠視眼・近視眼、白内障手術の術前患者
- 原理:内境界膜からの反響音を利用し、角膜表面から内境界膜までのエコー上の往復時間と音速から距離を算出する。
Aモード超音波検査法による眼軸長の測定方法
接触法と水浸法がある。日本では接触法を行うことが多い。
点眼麻酔後、被検者に顔を顎台に乗せてもらい、深触子(プローブ)の中央にある内部固視灯を注視させる。測定者はプローブの先端を被検者の角膜中央に接触させる。
Aモード超音波検査法による眼軸長の問題点
- 測定者の手技が要求され、プローブの接触のさせ方など、初心者には難しい検査である。
- ①に近いが、測定者の癖が出ることがある。
- 極度に縮瞳している場合は散瞳が必要なため、閉塞隅角の場合は実施できない。
- 固視不良、瞬目過多、瞼裂狭小、瞳孔変形など測定困難な症例がある。
- 測定時間が長い。
このような問題点があるため、熟練者がやっても測定誤差は0.3㎜程度存在することもあるが、眼内レンズの度数は0.5D刻みのため、測定ミスは0.2㎜以内にしなければならない。
この眼軸長の問題点解消のために以下のことが推奨される。
- 2名以上の検査員で測定し、比較検討する。
- 手持ち型よりも、顎台に顔を固定するトノメーター型を用いる。
- 複数の測定で来た波形で、明らかに不適切なものを削除してから平均値を出す。
Aモード超音波検査法による眼軸長の信頼性
良好な波形は接触法では4本のスパイクを確認することができる。角膜前面、水晶体前面、水晶体後面、網膜(内境界膜)の4本であり、これらが垂直かつ、その高さが波形の半分以上のゲインを超えていることが重要となる。
『Increase A-scan Accuracy For Improved Outcomes』より引用
cornea:角膜前面、Ant.lens:水晶体前面、Post lens:水晶体後面、Retina:網膜(内境界膜)
光学式眼軸長測定検査
光学式眼軸長測定検査とは
光干渉法を利用した光学式眼軸測定検査は2002年から広く使われている。
現在5種類が日本国内で使用可能だが、広く使われているIOLMasterを代表機器として記述する。
レーザー光干渉法を利用して、光源には波長780nmの半導体ダイオードを使用している。指向性の高いレーザー光を中心かに当て、その反射を利用して視軸を測定している。
眼軸長としては涙液表面から網膜色素上皮を測定しているが、Aモードと相関するように補正され、内境界膜までの値に換算されている。
光学式眼軸長測定は非接触測定であるため圧平の影響がなく、通常のAモードの測定値よりも150~300μm長く測定される。
光学式眼軸長測定による眼軸長の利点と弱点
光学式眼軸長測定の利点は以下3つである。
- 非接触のため患者への負担が少ない。
- 測定技術が習得が容易なので、測定者による差がほとんどない。
- 再現性がよい
光学式眼軸長測定の弱点は
成熟白内障や後嚢下混濁が強い症例などは測定が困難
なことである。そのため、光学式眼軸長測定が困難な症例ではAモード超音波検査法による測定が必要となる。
光学式眼軸長測定による眼軸長の信頼性
IOLMaster®では、眼軸長測定には信頼係数(SNR:signal to noise ratio)が表示される。信頼係数が5以上の場合はその測定値は信用できる。
また、黄斑病変が存在する場合には、ダブルピークを示す例がある。具体的には、黄斑前膜で35%、黄斑浮腫で20%、黄斑円孔で4%程度に観察される。
ダブルピーク:視覚の科学Vol.29. No.4 2008より引用
このダブルピークがある場合には、網膜色素上皮までの正しい眼軸長を測定するために、手動操作でカーソルを後方へ移動する必要がある。
眼軸長測定まとめ
Aモード超音波検査法 | 光学式眼軸長測定 | |
測定軸 | 光軸 | 視軸 |
測定範囲 | 角膜表面から内境界膜 | 涙液表面から網膜色素上皮 |
測定形式 | 接触 | 非接触 |
測定値 | ばらつきある | 再現性が高い |
測定時間 | まちまち | 短時間 |
散瞳の有無 | あり | なし |
参考文献
- 今日の眼疾患治療指針 第3版
- 『Increase A-scan Accuracy For Improved Outcomes』より画像を引用
- 『視覚の科学Vol.29. No.4 2008』より画像を引用