抗MOG抗体関連視神経炎とは
MOG(myelin oligodendrocyte glycoprotein)は神経グリア細胞の一種のオリゴデンドロサイト上に存在する。このMOGを標的とする視神経炎を抗MOG抗体関連視神経炎という。多発性硬化症などの脱髄疾患と分かれて、その概念が一般化しつつあるが、多くの部分で脱髄疾患とオーバーラップすることも多い。
抗MOG抗体関連視神経炎の疫学
最終的には両眼性になることが多い。30代から50代の世代で二峰性を示し、男女差はほとんどない。特発性視神経炎のうち10%が抗MOG抗体陽性という報告もある。
抗MOG抗体関連視神経炎の症状
眼痛、頭痛の後、視力低下をきたす。特発性視神経炎よりも急な視力障害が起こりやすい。
抗MOG抗体関連視神経炎の所見
- 血清中の抗MOG抗体の検出は必須
- 視神経乳頭腫脹と眼球運動痛の割合は、抗AQP抗体陽性および両陰性群よりも、抗MOG抗体陽性群で有意に高かった。
- 限界フリッカー値(CFF)はほぼ全例で低下し、多くは20Hz未満である。
光干渉断層計(OCT)
発症初期は視神経乳頭周囲網膜厚が厚くなり、しばらく経つと菲薄化する。
画像検査
初回の視力低下時には単純MRI(STIR法や脂肪抑制画像)の冠状断で良い。再発時は視神経に沿って高信号所見が得られることがあるため、T1造影の冠状断を行った方が判定しやすい。
抗MOG抗体関連視神経炎の治療と予後
治療
初期治療はステロイドパルス療法である。ステロイドの経口投与による治療だけでは再発率が上昇するという報告もある。基本はメチルプレドニゾロン1000㎎を3日間投与だが、重症な5日間、高齢者や未成年では半量同日間投与を行う。2クール行っても改善なければ、免疫グロブリン大量静注や血液浄化療法を行う。多くがステロイドパルス療法が著効する。
再発抑制の後療法としては、ステロイド0.5mg/kg/dayから開始し、1週間で5-10㎎漸減していく。プレドニゾロン20㎎/日から15㎎/日に減量するときに再発しやすい。この際にアザチオプリン50-100㎎/日を併用し再発予防する。
予後
ステロイド点滴治療後の視力予後は良好だが、再発しやすく、視野異常が残りやすい傾向がある。ただし、視機能障害および眼痛はステロイド減量あるいは中断後に繰り返し起こりやすい。成人と比較して、小児はより良い回復傾向を示しており、多変量解析で成人よりも再発リスクが高い傾向にあった。
参考文献
- Clinical spectrum and prognostic value of CNS MOG autoimmunity in adults: The MOGADOR study
- Diagnosis and treatment of anti-myelin oligodendrocyte glycoprotein antibody positive optic neuritis
- Epidemiologic and Clinical Characteristics of Optic Neuritis in Japan
- Clinical Profile of Anti-Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein Antibody Seropositive Cases of Optic Neuritis
- Aquaporin-4 and Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein Autoantibody Status Predict Outcome of Recurrent Optic Neuritis
- A nation-wide survey of Japanese pediatric MOG antibody-associated diseases
- Clinical Features and Risk of Relapse in Children and Adults with Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein Antibody-Associated Disease
- A randomized, controlled trial of corticosteroids in the treatment of acute optic neuritis. The Optic Neuritis Study Group
- 富田ら.覚えておきたい神経眼科疾患.金原出版株式会社