エタンブトール視神経症とは
エタンブトールの副作用として、0.44-6%に視神経症を発症する。
発症には投与量が関係し60-100mg/kg/日で50%、25mg/kg/日で5-6%、15mg/kg/日以下で1%の発症率とされる。1日あたり25mg/kg以上を2カ月以上内服した場合に視力低下が起こりやすいとされている。また、総量100-400gで発症しやすい。
発症の危険因子は高齢者(60歳以上)、腎機能障害、高血圧、貧血、糖尿病などがある。特に、エタンブトールは腎排泄のため、腎結核の患者がより重症になりやすい。発症時期は2か月以内では起こりにくく、平均5~7か月との報告がある。長期内服例の方がリスクも継続する。
エタンブトール視神経症の自覚症状と他覚所見
自覚症状としては、霧視、色覚異常、両眼の視力低下などがあり、最も早期の症状は色覚異常である。
他覚所見としては発症早期から両耳側の視野感度が低下するのが特徴的である。その他にも、マリオット盲点の拡大、中心暗点、求心性視野狭窄などを認める。また、中心フリッカー値が比較的鋭敏な指標である。
光干渉断層計(OCT)で網膜神経節細胞複合体(GCC)の菲薄化や、視神経乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)の軽度腫脹が早期診断に有用との報告がある。その他にも色覚検査やアムスラーチャートを行うこともある。
エタンブトール視神経症の治療と予後
投与中止しないと視力は悪化し、進行すると不可逆的になり視神経萎縮などを認めるため、早期発見・治療開始が重要である。毎日自覚検査をチェックできれば3ヶ月毎、それが難しく自覚症状がなければ1-3ヶ月毎に診察を行う。
エタンブトールの投与を中止すると、中止後1-3カ月はさらに進行するが、視力、色覚、視野は数カ月から1、2年で徐々に改善する。しかし、視神経萎縮が高度だと、視機能の改善が得られない場合もある。有効な治療法はない。
参考文献
- Ethambutol-induced optic neuropathy: a nationwide population-based study from Taiwan
- Diagnostic value of ganglion cell-inner plexiform layer for early detection of ethambutol-induced optic neuropathy
- Longitudinal evaluation of visual function and structure for detection of subclinical Ethambutol-induced optic neuropathy
- Ethambutol-induced optic neuropathy: Functional and structural changes in the retina and optic nerve
- エタンブトールによる視神経障害に関する見解
- Visual outcomes of toxic optic neuropathy secondary to Ethambutol: A retrospective observational study from India, an endemic country