強度近視とは
強度近視はー6.0D以上の近視を指すことが多い。間違いやすいのが病的近視であるが、病的近視は『屈折度数は問わず、びまん性脈絡膜萎縮以上の萎縮性変化(特に乳頭耳側)もしくは、後部ぶどう腫を有する状態』をさす。
強度近視は特にアジア人に多いとされる。-8.0D以上の病的近視は日本の一般人口の約1%を占める。
眼軸長が1㎜延長すると約3D近視化するとされているが、その延長する機序は明らかになっていない。高度近視は家系内発症も多く、遺伝的要因が大きいとされる。
強度近視の症状
黄斑部に近視特有の眼底病変を生じると、中心視力低下や変視症をきたす。また、視神経乳頭も変形し、視野障害を呈する症例もある。
強度近視の併発および合併症
1.後部ぶどう腫
2.網脈絡膜萎縮
3.黄斑部出血
黄斑部出血には単純型と血管新生型があり、単純糖尿病網膜症型は2-3か月で自然吸収される。一方で、血管新生型は黄斑部に脈絡膜新生血管(CNV)が生じ、それに伴って出血する。長期的にはFuchs斑という瘢痕病巣とその周囲に境界明瞭な網脈絡膜萎縮を形成し、視力予後は不良とされる。
4.近視性牽引黄斑症
5.網膜剥離
6.近視性視神経症
若年期の眼軸長の延長により、視神経乳頭の耳側縁が鼻側へ偏位して視神経乳頭に傾斜や回線が生じ、縦長の楕円、斜めの楕円、横長の楕円などの形状となる。そして、もともと乳頭があった耳側部位にコーヌスとよばれる網脈絡膜萎縮が形成される。
壮年期には加齢により、コーヌス周囲に網膜色素上皮の萎縮が形成される。この網膜色素上皮の萎縮とコーヌスは判別が難しいため、合わせて乳頭周囲網脈絡膜萎縮(PPA)と呼ばれている。このPPAが拡大すると、視野障害も増悪することがある。
近視では原発開放隅角緑内障発症のリスクが2~3倍増加する。強度近視の13.2-20%に視野障害を認め、6割以上で視野障害が進行する。眼軸長延長に伴い、視神経周囲の伸展変形することで、視野障害をきたすものを近視性視神経症という。緑内障視神経症と比べ、中心付近の視野障害をきたしやすい。
近視による緑内障と通常の緑内障の鑑別
近視による緑内障と通常の緑内障の鑑別は難しいが、その鑑別に視野障害が有用なことがある。近視による緑内障では、、水平経線を越えない周辺部鼻側欠損、弓状暗点、孤立性固視点近傍暗点などのほかに、Mariotte盲点拡大、水平経線を越えない扇状耳側欠損、水平経線を越える扇状耳側欠損を認めることがある。
7.近視性脈絡膜新生血管
8.lacquer crack
強度近視の診断
診断は屈折検査および眼軸長測定が有用である。中心視力低下や変視症など症状を有するときは、強度近視による併発あるいは合併症をきたしている恐れがあるため、光干渉断層計(OCT)や蛍光眼底造影検査(FAG)などを行う。
強度近視の治療
強度近視の眼軸長の延長を止めるのは難しく、合併症があればその治療を行う必要がある。近視性視神経症は効果が不明とされるが、緑内障視神経症と同様に、眼圧下降薬により視野進行を抑制する。
強度近視の予後
強度近視眼の予後は合併症の有無による。近視性CNVがあれば、自然経過で5年以上するとほとんどの患者が矯正視力0.1以下となり予後不良である。また、びまん性網脈絡膜萎縮のみだと視力予後は比較的良好とされる。
強度遠視
強度遠視は+6D以上の強い遠視を言い、診断には眼軸長検査や屈折検査、角膜曲率半径の測定を行う。血管の蛇行などの網膜血管異常や、視神経乳頭の境界が不鮮明となり、偽視神経炎を呈することがある。前房は浅く、閉塞隅角緑内障を起こしやすい。
小児の強度遠視は、弱視あるいは調節性内斜視などの原因になるため、眼鏡などで屈折矯正をする必要がある。小児期以降では、眼鏡に加えてコンタクトレンズや屈折矯正手術による矯正も行われている。
参考文献
- 今日の眼疾患治療指針第3版
- あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020