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脈絡膜母斑概論
脈絡膜に生じた母斑細胞母斑で、基本的には良性である。悪性黒色腫(メラノーマ)への移行は予後不良病変で1つとされる。約10%にみられる。
臨床所見は様々あるため、「視力低下の原因か」「悪性化のリスクはあるか」が重要な指標となる。そこで、母斑とメラノーマの鑑別が重要となる。ポイントは全部で6種類あるとされる。
To Find Small Ocular Melanoma Doing Imaiging(TFSOM-DIM)
- Thickness:腫瘍厚>2㎜(エコー検査)
- Fluid subretinal:網膜剥離(OCT)
- Symptoms vision loss:視力低下
- Orange pigment:オレンジ色素(眼底自発蛍光で過蛍光)
- Melanoma hollow:腫瘍内低反射(エコー検査)
- DIaMeter:腫瘍径>5㎜(眼底写真)
5年後にメラノーマに移行するリスクは
- 0因子→1%
- 1因子→11%
- 2因子→22%
- 3因子→34%
- 4因子→51%
- 5因子→55%
臨床的には4因子以上でメラノーマと診断することが推奨されている。特に、腫瘍厚、網膜剥離、オレンジ色素はもっとも重要な所見とされる。
また、成人で増大する母斑は悪性化していると考えてよい。
脈絡膜母斑各論
脈絡膜母斑は脈絡膜上腔を基底にした鏡餅型に発育し、基底は円形で頂点部分も不整形にならない。茶褐色あるいは灰褐色である。OCTやBモード超音波検査では、境界明瞭で内部の構造はメラニン色素により透見不能である。Bモード超音波検査では、内部は音響空砲として観察される。腫瘍厚は2㎜未満であることが多い。
フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)およびインドシアニングリーン蛍光造影検査(IA)では造影早期から後期まで一貫して低蛍光を示す。病変への栄養血管や内部の異常血管はない。病変上に網膜色素上障害があれば造影早期からwindow defectを認める。メラニン色素のためも過蛍光となる。
脈絡膜メラノーマ
脈絡膜メラノーマは、脈絡膜メラノサイトの悪性腫瘍で、成人の原発性眼内悪性腫瘍の中では最多である。しかし、日本での発生率は400万人に1人で、年間新規発生者数は30名前後である。10年遠隔臓器転移率は50%で、そのうち肝臓が9割を占める。
脈絡膜メラノーマの症状
初期および眼底周辺部に発生した場合は無症状だが、進行すると、飛蚊症、視力低下、変視症、視野障害などをきたす。
脈絡膜メラノーマの検査所見
眼底検査
脈絡膜メラノーマはほぼ全例に漿液性網膜剥離(滲出はまれ)か硝子体出血を認める。脈絡膜メラノーマの基底部は円形が基本だが、浸潤性発育のため不整形となることもある。
光干渉断層計(OCT)
OCTでは網膜構造の不整、網膜内浮腫、網膜下液などを認める。
MRI
メラノーマの放射線学的検査で最も特異性が高いのは、¹²³I-IMPシンチグラム(脳血流シンチ)の24時間像である。一般的に用いられている、¹⁸F-FDG-PETよりも感度と特異度が高いとされる。また、MRIにてはT1強調で高信号、T2強調で低信号、Gdで造影される。
Bモード超音波検査
病期が進行すると、ドーム状、マッシュルーム状隆起として観察される。腫瘍内部は低反射(音響空砲)を呈し、診断的意義は高いとされる。また、眼底自発蛍光はオレンジ色素の検出にも優れている。
OCT angiography(OCTA)、フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)、インドシアニングリーン蛍光造影検査(IA)
OCTAでは腫瘍表面の血管を描出でき、FAでは腫瘍上のびまん性蛍光漏出と網膜血管と乳頭からの反応性蛍光漏出がある。嚢胞様黄斑浮腫(CME)を認める。IAでは腫瘍内血管が透見されてループ形成や血管拡張(double layerサイン)を認め終始低蛍光であり、検眼鏡所見よりも大きい低蛍光領域を認める。
FAF
orange pigment(=リポフスチン)が、散在する高輝度の点状病変として観察される。
参考文献
- あたらしい眼科Vol39,No.6,2020
- 眼科学第2版
- 第126回日本眼科学会総会
- あたらしい眼科Vol39,No.6,2022