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網膜変性疾患診療のポイント
- 若年や幼少期からの症状の自覚や、徐々に出現し緩徐に進行する症状→IRD(遺伝性網膜ジストロフィ)を疑う
- 患者が発症時期を記憶しているような、ある時点から急性に発症した症状→後天性疾患を疑う
- 網膜変性疾患の代表的な症状:羞明、夜盲、光視症
- IRDの診断には主に全視野ERG
- RP:幼少期~中齢時に夜盲を自覚し、進行とともに、羞明、視野狭窄、視力低下を生じる。網膜色素上皮障害の範囲にはFAFが有効。全視野ERGは杆体・錐体がともに強く減弱し、消失型が多い。
- RPと鑑別に上がる疾患
- 色素性傍静脈周囲網脈絡膜萎縮(PPRCA):原因は遺伝と後天性ともに考えられている。杆体・錐体機能の減弱が軽いことが多い。多局所ERGでは、網脈絡膜萎縮部に一致した振幅の低下を認める。一般的に視機能障害は軽い。
- コロイデレミア:X染色体潜性遺伝。CHMが原因遺伝子として報告されている。網膜血管の狭細化がなく、FAFで病変部と正常網膜の境界が明瞭でシャープな形状。
- クリスタリン網膜症:CYP4V2が原因遺伝子の常染色体潜性遺伝を示す脈絡膜ジストロフィ。網膜色素上皮上にクリスタリン様沈着物を認める。クリスタリン様沈着物は網膜萎縮の進行に伴い目立たなくなる。
- 脳回状網脈絡膜萎縮:常染色体潜性遺伝。高オルニチン血症と高オルニチン尿症をきたす。
- Leber先天盲:常染色体潜性遺伝が多く、CEP290、GUCY2D、CRB1、RPE65などが報告されている。1歳までの間に眼振、夜盲を認めることが多い。矯正視力は0.1程度で、遠視が多い。眼底の色調は全体的に暗く、網膜血管の周辺の狭細化を認める。全視野ERGは消失型。
- ルクスターナ注(一般名:ボレチゲンネパルボベク)の治療対象→RPE65変異を持つLCAと早期発症重症網膜ジストロフィ(EOSRD)が主。5歳以内に発症し、夜盲、視力障害を認める。眼振は軽度であることも多い。若年時には周辺網膜に白点を認め、RPEの萎縮は目立たず、OCTでも網膜厚は比較的保たれていることも多い。FAFは広範囲に低蛍光を呈する。20歳以降に重度の視機能障害へと進行する。治療は若年時に行う方が効果が大きい。
- BEST病
Best病と成人発症卵黄様黄斑ジストロフィこの記事ではBest病と成人発症卵黄様黄斑ジストロフィについて説明しています。Best病と成人発症卵黄様黄斑ジストロフィについて知りたい方は必見です。...
- Autosomal Recessive Bestrophinopathy(ARB):常染色体潜性遺伝。常染色体顕性遺伝のBEST病とは異なる眼底の特徴を示す。FAFは後極全体に過蛍光と低蛍光が混在する所見を示す。OCTでは黄斑部に視細胞外節の伸長を伴う漿液性網膜剥離、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、choroidal excavationを認める。全視野ERGは軽度異常を示し、EOGは重度の障害となる。短眼軸であることも多い。
- IRDと鑑別が難しい後天性疾患:AZOOR、自己免疫網膜症
- COVID-19感染後に急性期に起こる疾患:PAMM、acute macular neuroretinopathy。OCTが最も有用で、OCTAの活用が有用な場合もある。
- COVID-19ワクチン関連網脈絡膜疾患:VKH、AZOOR、APMPPE、MEWDSが報告されている。
- Leber congenital amaurosis/early-onset severe retinal dystrophy: clinical features, molecular genetics and therapeutic interventions
- Real-World Safety and Effectiveness of Voretigene Neparvovec: Results up to 2 Years from the Prospective, Registry-Based PERCEIVE Study
- Clinical and Genetic Findings of Autosomal Recessive Bestrophinopathy in Japanese Cohort
- Clinical and Diagnostic Findings of Acute Macular Neuroretinopathy and Paracentral Acute Middle Maculopathy in the COVID-19 Era
- A multicenter study of ocular inflammation after COVID-19 vaccination
クリスタリン網膜症この記事ではクリスタリン網膜症について解説しています。クリスタリン網膜症について知りたい方は必見です。...
コロイデレミアこの記事ではコロイデレミアについて解説しています。コロイデレミアについて知りたい方は必見です。...
白点状眼底この記事では遺伝性夜盲の一つである白点状眼底について解説しています。白点状眼底について知りたい方は必見です。...
視神経乳頭:緑内障と紛らわしい視神経・視路疾患
- リムの蒼白化が早期から起こり、通常3次元的な乳頭陥凹拡大は生じない:頭蓋内および眼窩内病変の圧迫により視神経の軸索が障害されて生じる圧迫性視神経症
- 半盲の最終診断は、実測閾値で判断することが推奨されている。
- 実測閾値においてまずは、正中線をはさむ左右の対の数値を比較する。左右差が2dB以上の点が上下に連続して3個以上一方が低い場合、さらにその横の対の数値を比較し、同様の基準を満たす場合、有意な垂直半盲があると判断する。
- 耳側半盲の早期診断のために、正中線にそって耳側が2dB以下の低下が連続4対、あるいは3dB以上の低下が連続3対あれば、有意とすると報告している。
- 髄膜腫:NTGと合併したり、間違われたりしやすい。MRIでは脳実質と等信号輝度であるため造影剤を併用しないと見逃す恐れがある。脂肪抑制を併用したT1強調画像に造影剤を用いることが望ましい。
- 明日から役立つ神経眼科 自動静的視野検査の読み方 ハンフリーに隠された5つのリング:“The Lord of the Rings”
- Automated perimetry in neuro-ophthalmology
- Criteria for early detection of temporal hemianopia in asymptomatic pituitary tumor
- 緑内障と間違われやすい視神経病変-神経眼科医からのアプローチ-
- AION:慢性期には緑内障に似たOCT所見を認めることがある。大多数の症例では、浮腫が引いた後に、乳頭のリムは蒼白になるが、緑内障様の乳頭陥凹をきたすことがある。
- 同名半盲性傍中心暗点:脳梗塞、脳出血など
- 乳頭コロボーマ
視神経乳頭欠損(視神経コロボーマ)視力障害をきたす先天性疾患として知られている視神経乳頭欠損(視神経コロボーマ)について解説しています。視神経乳頭欠損(視神経コロボーマ)について知りたい方は必見です。...
- 先天性乳頭小窩(ピット):対応する位置に網膜神経線維層欠損がみられ、それに対応して視野障害を認める。
視神経乳頭小窩この記事では視神経乳頭小窩について解説しています。視神経乳頭小窩について知りたい方は必見です。...
強化単焦点眼内レンズは標準治療になりえるか?ESCRS functional vision working groupによるエビデンスに基づく評価
- enhanced monofocal IOLで単焦点IOLよりも中間距離視力が有意に良好であった。遠方視力、近方視力、コントラスト感度、不快光視現象は同等であった。enhanced monofocal IOL、単焦点IOL、真のEDOF IOL(TECNIS symphony)で比較した研究では、遠方視力、中間視力はenhanced monofocal IOLとEDOFで同等であり、ハローグレアはEDOFで強かった。
小児ぶどう膜炎
- 治療における薬物療法と副作用管理
- コルチコステロイド剤:成長障害、体重増加、骨密度の低下。特に、成長期の小児においては、コルチコステロイドの使用による成長抑制のリスクがある。
- 免疫抑制薬:シクロスポリンは腎機能障害や高血圧。メトトレキサートは骨髄抑制や肝機能障害、肺毒性が懸念される。
- 生物学的製剤(抗TNF製剤):コルチコステロイド離脱時に有用。感染症リスクはあるため、結核やその他の重篤な感染症をスクリーニングが必要。
保険収載されたIRD遺伝学的検査の課題
- IRDにおける遺伝学的検査の重要な役割
- 治療適否判断
- 遺伝形式の決定
- 予後に関する情報
- IRDの原因遺伝子:300以上
- 網膜色素変性症の原因遺伝子:80以上
- IRD遺伝学的検査の課題
- バリアント解釈
- エキスパートパネル
- 遺伝カウンセリング
ドライアイ診療のコツ
- 人工涙液の眼表面の水分が増加する時間は最大2分、ヒアルロン酸点眼は5分、ジクアホソル点眼では最大30分