Best病と成人発症卵黄様黄斑ジストロフィ
Best病は若年者に発症する常染色体優性遺伝の黄斑変性として知られる。黄斑下の黄色沈着物(リポフスチン)を認め、数年で変化していくことが特徴的である。欧米に多く、日本には少ない。
成人発症卵黄様黄斑ジストロフィ(AFVD;adult-onset foveomacular vitelliform dystrophy)は眼底がBest病と類似しており、見た目での鑑別は困難とされる。
Best病はBEST1遺伝子が同定され、原因遺伝子とされている。ただし、一部遺伝子異常を認めない症例もある。AFVDも同様で、BEST1遺伝子異常を認めるものもあるが、孤発例がBest病よりも多いとされ、PRPH2遺伝子の異常による症例報告もある。
Best病とAFVDの診断と臨床的特徴
Best病とAFVDともに比較的視力予後良好で、左右差を認めることが多い。鑑別は発症年齢とelectroculogram(EOG)の所見でなされる。Best病は若年者で発症し、EOGのL/D比は低下する。AFVDは40歳以降の発症が多く、L/D比は正常範囲内の症例が多い。両者とも周辺部視野やfull field ERGは正常範囲内であるが、multifocal ERGは多くの患者で異常を示す。
Best病の眼底写真
Research Gate HPより引用
AFVDの眼底写真
ASRS HPより引用
Best病の病期
- Previtelliform stage;正常~色素上皮の軽度異常
- Vitelliform stage;0.5~2.0乳頭径大の辺縁明瞭な卵黄様病変
- Pseudohypopyon stage;黄色沈着物が下方にニボーを形成
- Vitelliruptive stage;炒り卵期、部分的に沈着物が吸収される
- Atrophic stage;網脈絡膜萎縮
Best病の画像検査
1.眼底自発蛍光(FAF)
黄色沈着物は強い過蛍光を示す。特に、偽蓄膿期、炒り卵期では病変部の辺縁に粒状の過蛍光が明瞭に観察される。
Reshearch gate HPにより引用
2.蛍光眼底造影検査
黄色沈着物存在部位はブロックによる低蛍光、黄色沈着物が崩れた部位では色素上皮の萎縮によってwindow defect(過蛍光)となる。
Best病とAFVDの治療
有効な治療方法はないが、続発するCNVに対して加療を行うことがある。
参考資料
- 黄斑疾患診療AtoZ
- 眼科学第2版
- あたらしい眼科 Vol.39, No.6, 2022