視神経乳頭欠損の診断
胎生期4~6週に眼杯裂閉鎖不全により生じ、閉鎖不全部に相当して視神経乳頭を含んだ眼球下方における網膜色素上皮と脈絡膜の欠損する先天異常である。視神経乳頭の異常な拡大と境界明瞭な白色陥凹を呈する。視神経形成異常があるため、視力不良例が大部分である。孤発例が多いとされるが、家族歴もしばしばあるとされる。両眼性が多い。
軽度:視神経乳頭部のみの欠損(=Mariotte盲点拡大)
重度:視神経乳頭の拡大が広範囲となり、下方の脈絡膜(→上方の視野欠損)や虹彩欠損
視神経乳頭欠損の症状
乳頭黄斑線維束がコロボーマに巻き込まれているか、その程度によって症状は視力良好になったり、視力不良になったりする。
視神経乳頭欠損の合併症・併発症
虹彩コロボーマや脈絡膜コロボーマをしばしば合併し、脈絡膜コロボーマの陥凹領域が広いと小眼球を呈することがある。視神経乳頭コロボーマ単独発症例では漿液性網膜剥離を伴うことがあり、網脈絡膜コロボーマ合併例では裂孔原性網膜剥離を続発することがある。
代表的な全身異常として、CHARGE症候群とAicardi症候群がある。
CHARGE症候群はコロボーマ(Coloboma)、心奇形(Heart disease)、後鼻腔閉鎖(Atresia choanae)、身体・精神発達遅滞(Retardation of growth and mental development)、生殖器低形成(Genital hypoplasia)、外耳異常(Ear anomalies and/or deafness)の頭文字を取った全身多臓器奇形症とされている。
一方で、Aicardi症候群は脳梁欠損やてんかん、肺炎、精神発達遅滞を伴う全身疾患である。近年になり、腎尿路形成異常を合併する症例で高頻度にPAX2の変異が報告されている。PAX2は眼球の腹側の決定する遺伝子とされ、胎生裂の閉鎖に関与すると考えられている。
視神経乳頭欠損の診断
眼底検査で診断可能だが、エコー検査や光干渉断層計(OCT)を行うことも多い。頭蓋内にその他の奇形がないか、MRIやCTで検索し確定診断する。また、上述した合併症がないかも小児科に確認する必要がある。
視神経乳頭欠損の治療
漿液性網膜剥離に対しては様々な治療方法があるが、定まった見解はなく、自然消退する症例も報告されている。裂孔原性網膜剥離が起きた場合は裂孔原性網膜剥離に準じた治療を行う。
参考文献
- 眼科学第2版
- クオリファイ7視神経疾患のすべて(専門医のための眼科診療クオリファイ)
- 今日の眼疾患治療指針第3版
- あたらしい眼科Vol.38, No.9, 2021
- 眼科 2021年12月臨時増刊号 63巻13号 特集 覚えておきたい神経眼科疾患