皆さんは目は悪いですか?実は目が悪い(近視)のは緑内障のリスクになるのですが、どれくらい目が悪い(近視が強い)ことが緑内障の発症に影響を与えるのか調べたので、その論文を紹介したいと思います。
論文を紹介する前に、そもそも「近視とは何か」「緑内障とは何か」について知っている必要があります。
近視とは
日本近視学会によると、近視とは
眼球の形が前後方向に長くなって、目の中に入った光線がピントが合う位置が網膜より前になっている状態
と説明されています。いわゆる一般的に言われる「目が悪い」状態を近視と言って、裸眼だと本やスマホの字を近づけないと字が見えない状態です。
日本人をはじめ世界各国で近視の人が増え、韓国ソウルでは18歳の男性の96.5%が近視という国もあるくらいです。
緑内障とは
緑内障はご存知の方もいらっしゃると思いますが、緑内障はガイドラインで
視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である。
と定義されている病気で、日本人の失明原因の第1位とされています。また、20人に1人が緑内障であるとされています。
近視と緑内障の関係
はじめに
「近視は緑内障のリスクである」と皆さんも聞いたことがあるかもしれません。しかし、どのくらいリスクになるかご存知ですか?
今日紹介する論文は1999年にシドニー大学のPaul Mitchellらが発表した論文で、タイトルは『The relationship between glaucoma and myopia: The blue mountains eye study』です。
研究の対象者
この研究の対象は3654名のオーストラリア 人で年齢は49〜97歳まででした。ちなみに、オーストラリア人が緑内障なる頻度は少なく、Australia glaucoma HPによればその頻度は100人に2人だそうです。それを踏まえた上でこの論文を見ていきます。
研究の方法
近視に関しては3654名を
- -1.0〜-3.0Dの軽度近視
- -3.0以上の中等度〜高度近視
の2つに分けます。そして、
- 視神経乳頭のcupping とrimの菲薄化と組み合わせて、緑内障に特徴的な視野欠損→緑内障
- 緑内障性の変化はなく、眼圧が21mmHg以上→高眼圧症
と診断されています。
研究の結果
論文にある研究結果をまとめると下記のようになった。
緑内障と近視に関して
- 近視がないが、緑内障だった患者は1.5%
- -1.0〜-3.0Dの軽度近視で緑内障だった患者は4.2%
- -3.0以上の中等度〜高度近視で緑内障だった患者は4.4%
- 緑内障のリスク因子として知られている因子を調節しても、緑内障と近視の相関は2.3倍あり、中等度から高度近視に限った場合はその相関は3.3倍もあった
高眼圧症と近視に関して
- 軽度近視では1.8倍の相関関係、中等度から高度近視では0.9倍の相関関係があった
- 近視がない患者に比べ、近視がある患者では平均眼圧は約0.5㎜Hg高かった
研究の結論
この研究から言えることは「近視は緑内障のリスクとなり、その近視度が強ければ強いほど緑内障になるリスクが高くなる。
一方、高眼圧症については近視度が上がったとしても高眼圧症のリスクが上がるとは言えないが、近視は平均眼圧上昇のリスクになる」ということが言えます。
おわりに
「近視は緑内障のリスクである」、これは眼科医にとって常識ですが、どの程度の確率なのか知っておく必要はあります。この研究はオーストラリア人の結果ですが、近視人口の割合の程度の差はありますが、同様のことが日本人に対しても言えるのではないでしょうか。
患者さんにとっても、近視は近くを見る作業(スマホやパソコンなど)で進行するため、緑内障のリスクを考えると、普段の生活で近くを見る生活習慣を是正する足掛かりになるのではないかと思います。
とはいえ、「どうやって近視の進行を抑えればよいのか分からない」という人もいるでしょう。そんな方のために『どうすれば近視の進行を抑えるか』についての記事を書いていますので、そちらも併せてご覧になってください。それではまた次の記事でお会いしましょう!
参考文献
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