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膠様滴状角膜ジストロフィ | オンライン眼科
角膜とその疾患

膠様滴状角膜ジストロフィ

膠様滴状角膜ジストロフィとは

幼児期に発症する両眼性の角膜上皮ジストロフィで、沈着物質は非AAアミロイドとされる。初期病変としては角膜上皮下から実質浅層のびまん性混濁がみられる。進行例では角膜輪部に微小透明な顆粒状変化がみられる。

顆粒状変化は直径0.3㎜~0.5㎜の乳白色の隆起病変である。輪部から角膜表層を中心とする血管侵入がある。さらに進行すると角膜全体に沈着病変が形成され、表面が不正で凸凹になる。実質深層への沈着は実質中層から浅層と比べて遅く、軽度なことが多い。

遺伝形式は常染色体劣性遺伝で、遺伝子座は1p32、遺伝子はTACSTD2である。TACSTD2遺伝子の機能喪失によりtight junctionの蛋白(Claudin1,7)の分解が亢進され、tight junvtiionの形成が行われなくなり、上皮のバリア機能が低下する。

それによって、涙液中のラクトフェリンなどのたんぱく質が角膜内に侵入して、アミロイド線維を形成し上皮下に沈着していくと考えられる。頻度は31,000~35,000分の1とされるが、臨床で遭遇することはまれとされる。日本は欧米諸国よりも比較的頻度が高いとされている。

膠様滴状角膜ジストロフィの症状と所見

症状

10歳代までに発症し、幼児期より異物感羞明を訴える。また、角膜表面の沈着物、混濁、血管迷入により視力低下を訴えることがある。また、隆起病変による疼痛も認めることがある。他の角膜ジストロフィと比較して刺激症状が強いなどの特徴もある。

所見

初期に角膜中央部から上皮下に灰白色半透明の隆起性病変を認める。時間とともに隆起性病変の数は増え、癒合しながら角膜中央から周辺へと広がっていき角膜全体を覆う。

角膜上皮欠損がないのにもかかわらず、フルオレセインが実質に浸透する。

Wikimedia Commons HPより引用

病理所見は、角膜上皮が菲薄化し、角膜上皮下の乳白色の混濁はアミロイド沈着のためコンゴレッドで赤く染色され、偏光顕微鏡で黄緑色の像を示す。

膠様滴状角膜ジストロフィの診断と重症度

膠様滴状角膜ジストロフィーの診断基準

A.症状

  1. 視力低下
  2. 羞明
  3. 異物感
  4. 流涙

B.検査所見

1.両眼の角膜中央部から瞼裂に灰白色隆起性の角膜上皮直下のアミロイド沈着物の集簇(桑の実状と呼ばれる)を認める。

2.透過性の亢進から角膜上皮障害がないにもかかわらず、フルオレセイン染色後数分後に蛍光が観察されるdelayed stainingを認める。

3.角膜周辺部に表層の血管侵入を認める。

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。

1.二次性アミロイドーシス(注1)

2.Climatic droplet keratopathy(注2)

D.眼外合併症

なし

E.遺伝学的検査

TACSTD2遺伝子に異常を認める。(注3)

<診断のカテゴリー>

Definite:

  • Dを満たし、Aのいずれかを認め、Bの1を認め、Cの鑑別すべき疾患を除外できる症例
  • Dを満たし、Aのいずれかを認め、Bの2または3を認め、Eを認め、Cの鑑別すべき疾患を除外できる症例 (注4)

注釈

注1.睫毛乱生症や眼瞼内反症により睫毛が角膜上皮に接触する場合や、円錐角膜の突出の頂点付近の角膜上皮直下のアミロイドを認める場合があり、本疾患の角膜所見に類似する場合がある。

注2.40歳以上の男性に多く、黄色から灰白色の隆起状角膜病変により視力が低下する疾患。通常砂漠や極寒地域に見られ、紫外線や乾燥が原因と考えられている。

注3.TACSTD2はシングルエクソン遺伝子であり、検索が容易であること、また、本邦患者において同祖性が存在しQ118X変異(創始者変異)が病因染色体の80%以上を占めること、さらに、非典型例もこの創始者変異により発症することから診断的価値は高い。

注4.本症においては、Bの1は非常に特徴的な所見であり、診断に苦慮することはない(典型例)。

Bの1を認めない非典型例においては、A~Cのいずれかの組み合わせとEの遺伝子検査を持って診断する。

重症度分類

以下でIII度以上の者を医療費助成の対象とする。

  1. I 度:罹患眼が片眼で、僚眼(もう片方の眼)が健常なもの
  2. II 度:罹患眼が両眼で、良好な方の眼の矯正視力0.3以上
  3. II 度:罹患眼が両眼で、良好な方の眼の矯正視力0.1以上、0.3未満
  4. IV 度:罹患眼が両眼で、良好な方の眼の矯正視力0.1未満

注1.健常とは、矯正視力が1.0以上であり、視野異常が認められず、また、眼球に器質的な異常を認めない状況である。

注2.I~III度の例で、続発性の緑内障等で良好な方の眼の視野狭窄を伴った場合には、1段階上の重症度分類に移行する。

注3.視野狭窄ありとは、中心の残存視野がゴールドマンI/4視標で20度以内とする。

注4.乳幼児等の患者において視力測定ができない場合は、眼所見等を総合的に判断して重症度分類を決定することとする。

※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項

1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。

2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。

3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。

膠様滴状角膜ジストロフィの治療

1.治療用ソフトコンタクトレンズ

視力の改善または維持、SCL装用後1ヶ月から自覚症状の改善、膠様隆起病変の再発抑制、手術間隔の延長が期待されるため、治療用コンタクトレンズを装用する。

しかし、有害事象として、感染性角膜炎、脂質やタンパク成分によるソフトコンタクトレンズ表面沈着物形成、タイトフィッテイングによる眼痛などがある。これらは定期的なレンズ交換や経過観察で安全性が確保される。

2.外科的治療

視力回復には表層角膜移植が必須であるが、数年で再発するため複数回の角膜移植が必要となる。また、角膜上皮搔爬、治療的角膜切除、角膜移植などを行うが、視力予後は不良なことが多い。

合併症

  1. 術中合併症:前房おやび層間出血
  2. 術後早期合併症:縫合不全、浅前房、縫合糸のぬるみ
  3. 術後晩期合併症:緑内障(8.3-55.6%で手術の内容により割合は異なる)、感染性角膜炎、拒絶反応、網膜剥離

参考文献

  1. 細隙灯顕微鏡用語活用アトラス事典
  2. 今日の治療指針第3版
  3. 眼科学第2版
  4. 難病情報センターHP
  5. あたらしい眼科Vol.39,No.12,2022
  6. Identification of the gene responsible for gelatinous drop-like corneal dystrophy
  7. Primary gelatinous drop-like keratopathy
  8. Boston Type 1 Keratoprosthesis for Gelatinous Drop-Like Corneal Dystrophy
  9. Limbal Stem Cell Transplantation for Gelatinous Drop-like Corneal Dystrophy
  10. Limbal stem cell transplantation for the treatment of subepithelial amyloidosis of the cornea (gelatinous drop-like dystrophy)
  11. Efficacy of therapeutic soft contact lens in the management of gelatinous drop-like corneal dystrophy

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