真菌性角膜炎とは
真菌が感染して発症する角膜炎を真菌性角膜炎という。植物による外傷や、ステロイド点眼長期使用者に発症することが多い。頻度は多くないが、診断に苦慮したり、治療に抵抗性だったりすることがある。
真菌性角膜炎の起炎真菌は、Aspergillus属、Cephalosporium属、Fusarium属などに代表される糸状菌とCandida属などに代表される酵母菌に大別される。糸状菌は外傷(植物による突き目)、酵母菌は日和見感染が多いとされる。
真菌性角膜炎の症状
主な症状は充血と疼痛で、潰瘍形成の位置によって視力低下などもきたす。
真菌性角膜炎の診断
角膜所見と病巣部からの真菌の証明が重要である。糸状菌と酵母菌によってその所見は異なるため鑑別に有用である。
糸状菌型真菌性角膜炎の場合、灰白色の硬い感じをした病巣で辺縁は不整で、潰瘍底には凹凸があり、一部が盛り上がった病巣を形成することがある。潰瘍の周囲には羽毛様所見、衛生病巣などの特徴的な所見を伴う場合が多い。菌糸は横縦方向に進展するため、Descemet膜の所見も強い。角膜裏面に角膜内皮プラークが形成され、前房蓄膿を伴うことがある。
酵母菌型真菌性角膜炎では、境界明瞭な楕円型の病巣で、丸く白いカラーボタン様所見を呈する。潰瘍下の角膜実質には細胞浸潤が強く、高度のDescemet膜皺壁を伴う。
なお、確定診断には病巣部を擦過して、原因菌を証明する必要がある。擦過は病巣より大きめに、スパーテルなどを用いて行う。
真菌性角膜炎の治療
原因の特定まで1週間はかかるが、発育の遅い真菌であれば4週間かかることもある。臨床所見から真菌性角膜症が疑われた場合には、使用可能な薬剤の局所および全身投与を行う。
糸状菌が疑われる場合はポリエン系、酵母菌が疑われる場合はアゾール系を中心に加療を行う。重症例では結膜下注射や実質内注射を併用する。消炎にはアトロピンを用い、ステロイド点眼は使用しない。
ポリエン系 | アムホテリシンB ピマリシン ナイスタチン |
---|---|
アゾール系 | フルコナゾール ミコナゾール イトラコナゾール ポリコナゾール |
キャンディン系 | ミカファンギン |
フルオロピリミジン系 | フルシトシン |
これら薬物治療に加えて、外科的治療を行う。スパーテルなどを用いて、病巣部を週2回程度掻破する。薬物治療が奏効しなければ、表層から深層まで切除を行う。
真菌性角膜炎の予後
治癒後も瘢痕が残り、不正乱視を生じることが多い。治療に反応しない場合には穿孔、失明に至ることがある。
参考文献
関連記事
