目の病気

白血病と悪性リンパ腫

白血病

白血病細胞の眼部浸潤

白血病細胞は網膜、ぶどう膜など眼球のあらゆる部位へと浸潤するが、特に視神経乳頭に多いとされる。視神経は血液眼関門内の組織のため、抗癌剤が届きにくく、治療後に視神経乳頭への細胞浸潤で再燃が発覚するケースある。

一方で、眼瞼や眼窩など眼周囲の軟部組織に白血病細胞が腫瘤を形成することがあり、これを緑色腫という。FAB分類でM2に属するで起こりやすいとされる。また、小児白血病の初発症状に多いとされているが、高齢者や再燃時所見として現れることもある。

白血病治療中の感染性眼内炎

抗癌剤の影響で日和見感染、眼部では真菌性眼内炎が代表的である。霧視飛蚊症で発見されることが多く、初期は脈絡膜から網膜にかけて白色小隆起で、病原菌はカンジダが多い。カンジダの場合、眼内移行が良好なフルコナゾール、ホスフルコナゾール全身投与が通常有効である。

日和見感染のうち、眼部で最も恐ろしいのはサイトメガロウイルス網膜炎である。壊死傾向の強い炎症を惹起し、硝子体出血網膜剥離を続発する。

トマトケチャップ状網膜出血があれば診断は容易だが、初期は非典型的で評価が難しい。治療はガンシクロビル10~15mg/kg/dayのdiv、重症例では硝子体手術とガンシクロビル硝子体内投与を行う。

白血病網膜症

血管閉塞機転が生じ網膜静脈の拡張と蛇行、口径不同によるソーセージ様変化、綿花様白斑、血管の白鞘化が見られる。また、しみ状出血の中央に白点を伴う網膜出血(Roth斑)や軟性白斑などが生じ、白血病網膜症と呼ばれる症状を呈することがある。

全白血病患者の約70%に見られる。白血病細胞による直接的な影響、あるいはその治療による白血球減少によって起こる。特に急性白血病の再発時に多くみられる。

網膜出血はHb<6g/d、血小板<5万/μlで、また多発性骨髄腫などで高グロブリン血症を伴う場合、血液過粘稠により網膜血管の怒張を伴って出血する。

その他の白血病による眼部症状

  • 眼瞼、結膜への出血
  • 前眼部への白血病細胞浸潤による角膜輪部への浸潤病変や、その近傍の結膜肥厚、浮腫、コルクスクリュー様血管
  • ぶどう膜や毛様体への浸潤、虹彩の色素変化
  • 偽前房蓄膿
  • 虹彩後癒着
  • 続発緑内障(線維柱帯への浸潤)
  • うっ血乳頭、眼球運動障害

など

造血幹細胞移植治療後の合併症

移植片対宿主病に関する眼合併症は、ドライアイが最も多い。その他にもマイボーム腺機能不全、涙点自然閉鎖、白内障、ヘルペス性角膜炎なども生じることがある。

白血病に伴う眼症状に対する治療

全身治療として化学療法と造血幹細胞移植を行うが、眼局所には放射線治療を行うことがある。虹彩浸潤、白血病網膜症、続発緑内障に対しては2.5Gy5日間で寛解するとされる。また、視神経浸潤による視力低下に対しては、通常より大量の7~20Gyの放射線治療が効果的とされる。また、その他眼合併症に対してはその症状に対して加療を行う。

悪性リンパ腫

眼付属器の低悪性度リンパ腫

眼瞼、結膜、眼窩など軟部組織は悪性リンパ腫の好発部位で、特に低悪性度MALTリンパ腫が多い。眼窩リンパ腫は画像所見で眼球等を避けて隙間を埋めるように発育するため鑑別は比較的容易だが、組織は異型が軽いため、炎症性疾患と鑑別が困難なこともある。

眼付属器の高悪性度リンパ腫

成人T細胞白血病/リンパ腫が眼周囲軟部組織に、びまん性大細胞Bリンパ腫、ナチュラルキラー細胞リンパ腫などが眼部に原発することがある。全身化学療法に加え、発育が急速の場合は放射線治療等も必要となる。加療後リンパ腫が寛解した場合も視機能低下が残ることがしばしばある。

原発性眼内悪性リンパ腫(PIOL)

原発性眼内悪性リンパ腫(PIOL)とは

PIOLは仮面症候群の代表で、ステロイド抵抗性の硝子体混濁で疑われる。多くは網膜・硝子体に病巣を形成するため、最近は硝子体網膜リンパ腫と呼ばれることもある。多くの症例が中枢神経リンパ腫を併発し、致命的な経過をたどることが多い。

PIOLのほとんどはびまん性大細胞性B細胞リンパ腫であるため、悪性度が高く、特に中枢神経系に生じた際の予後は厳しい。これに対して、眼付属器にみられるリンパ腫では低悪性度のMALTリンパ腫が多く占める。

原発性眼内悪性リンパ腫(PIOL)の症状

視力は比較的良好で、時にリンパ腫細胞が硝子体混濁をきたし、霧視を訴えることがある。硝子体混濁は帯状、索状を呈し、後極部から周辺に放射状に広がる

網膜へ浸潤したリンパ腫細胞は網膜色素上皮や、色素上皮とBruch膜の間に病巣を形成し、次第に黄白色の斑状病巣(PIOL眼底写真)となる。まれに視神経乳頭周囲の網膜下に腫瘍細胞の浸潤をきたし、乳頭炎様の所見を呈する。

原発性眼内悪性リンパ腫(PIOL)の診断

内因性ぶどう膜炎と異なり、ステロイド治療に抵抗性であることから疑われる。

確定診断のために硝子体生検で組織診断をする。しかし、早期は悪性細胞が少ないため、悪性細胞検出頻度は必ずしも上がらない。一方、硝子体液のIL-10濃度が悪性リンパ腫で高く、炎症性ではIL-6濃度が高いという事実がある。

ゆえに、IL-10が100ng/ml以上、あるいはIL-10/IL-6≧1以上の場合には、悪性リンパ腫である可能性が高く、前房水でもこれらの値は参考になる。また、フローサイトメトリーや染色体検査が行われることもある。

PIOL診断後は画像検査を定期的に行い、中枢神経系リンパ腫早期発見に努める必要がある。

原発性眼内悪性リンパ腫(PIOL)の治療

原発性眼内悪性リンパ腫の治療では

  1. 放射線治療(30Gy程度眼局所)
  2. 眼内メトトレキサート(MTX)注射
  3. 大量MTX点滴(中枢神経系悪性リンパ腫を発症した場合)

が行われているが、副作用や再発の恐れはある。

二次性眼内悪性リンパ腫

二次性はぶどう膜を中心に浸潤する。前部ぶどう膜、虹彩毛様体に浸潤すれば前房水から診断が容易となる。全身治療が必要だが、眼所見軽快のため、まず放射線治療を併用することもある。

参考文献

  1. クオリファイ5全身疾患と眼(専門医のための眼科診療クオリファイ)
  2. 今日の眼疾患治療指針 第3版

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