眼瞼とその疾患

眼瞼けいれん

眼瞼けいれんとは

眼瞼けいれんは閉瞼しようとしたときに、閉瞼筋の収縮が止まらない状態である。正常の瞬目(瞬きのこと)では眼瞼を前方に引く眼瞼前引筋群と、後方へ引く随意性眼瞼後引筋群は同時に抑制されるが、眼瞼けいれん患者では、この2つの筋群間の同時抑制が消失している。眼瞼けいれんは60歳以上の女性に多く、眉毛の沈下を伴い就寝中は消失する。

1.本態性眼瞼けいれん

眼瞼部に限局したもので、両眼瞼の原因不明の不随意閉瞼発作で、ドライアイや皮膚弛緩症を合併する。中高年女性に多く、両眼性である。

Meige症候群:本態性眼瞼けいれんに加えて、口唇ジスキネジアなどの不随意運動を伴ったものをMeige症候群としているが、両者は同じ疾患と考えられている。

けいれんは衝動により変化し、明所・疲労、読書などで増悪し、暗所、睡眠、臥床などで軽減する。開瞼失行や他のジストニアの合併例が多い。慢性進行性で自然治癒はほとんどなく、最終的には閉瞼不能による機能的な失明に陥るとされている。ただし、類似した症状が統合失調症や向精神薬常用者などの若年者にも見られることもある。

2.続発性眼瞼けいれん

Parkinson病や進行性核上性麻痺などで錐体外路障害によって続発性に生じる。

3.反射性眼瞼けいれん

刺激性病変(角膜炎、眼瞼炎など)や虹彩炎などの眼痛などによる眼瞼けいれんのことである。

4.片側性顔面けいれん

顔面けいれんは眼瞼部のけいれんに同側の口角部のけいれんを伴うものである。ほとんどが片側性で、中高年に多い。慢性進行性で患側の流涙が自覚されることが多く、羞明感や眼乾燥感を訴えることは少ない。

原因は後頭蓋窩で、顔面神経が前下小脳動脈などの血管や腫瘍、動脈瘤などに圧迫され、その刺激または神経内での短絡によってけいれんを生じるとされる。

5.眼瞼ミオキミア

ミオキミアは虫がうごめくような比較的ゆっくりとした動きで、機能亢進で、橋病変などで生じうる。開瞼困難は生じない。

6.線維束攣縮

線維束攣縮は筋線維束の自発的収縮で早い動きを示す。下眼瞼耳側に多く、不快感を訴えるが、開瞼困難は生じない。疲労やストレスで増悪、安静にて軽快する。

眼瞼けいれんの診断

診察時に眼瞼けいれんがない場合は誘発試験を試みることがある。特に、強く閉瞼したり、「イー」と口角を引く動作を反復させたり、細隙灯顕微鏡や非接触型眼圧計などで強い光や風などの刺激を与えたりすることで眼瞼けいれんを誘発する。

眼瞼けいれんのポイント

  • 本態性眼瞼けいれん:下記がない場合の眼瞼けいれん
  • Parkinson病や進行性核上性麻痺などの続発性眼瞼けいれん:けいれんのないときの開瞼失行が特徴的である。また、ドパミン拮抗薬による遅発性ジストニアを認めることもある。
  • 反射性眼瞼けいれん:局所治療で改善する。
  • 眼輪筋ミオキミア:眉毛の沈下を伴わない
  • チック、ヒステリー:小児、若年者の随意性の眼瞼の上下方向への粗動
  • 片側性顔面けいれん:眼輪筋から頬部、口角へと広がり、就寝中でもみられる

眼瞼けいれんの治療

眼瞼けいれんの増悪因子である疲労やストレスを軽減することが治療の基本である。本態性眼瞼けいれんの場合、最初の5年間は進行するが、その後は落ち着くことが多い。10%の患者ではけいれんが収まるが、15%は機能的に失明する。頻回けいれんで視力が障害され日常生活に支障をきたす場合、ボツリヌス毒素注射で加療を行い、治療抵抗性がある場合は薬物療法を検討する。

1.A型ボツリヌス毒素注射治療

現在では治療の第一選択である。

神経終末のアセチルコリン(Ach)の放出を抑え、けいれんを抑制する。90%に有効とされる。効果発現までに2~3日、効果消失は3~4か月程度となっている。まれにA型ボツリヌス毒素に対する抗体がある患者さんがいるが、F型毒素が有効であるとされる。しかし、F型毒素は持続期間が短いとされる。また、効果を維持するために高用量頻回治療を行うことがあるが、長期的には効果が減弱するため注意する必要がある。

2.内科的治療

保険適応外だが、薬物治療としてロラゼパム、クロナゼパム、トリヘキシフェニジルが用いられる。効果は個人差が大きく、15%の患者さんに効果があるとされる。

3.外科的治療

顔面神経の部分切除術(Reynold法)や眼輪筋の切除術(Anderson法、protractor myectomy)がある。また、眼瞼下垂や皮膚弛緩などの併発があれば形成外科的手術を行う。

4.顔面神経ブロック

片側性顔面けいれんで行われる。

参考文献

  1. 今日の眼疾患治療指針第3版
  2. 眼科学第2版

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