眼類天疱瘡とは
類天疱瘡は粘膜が存在する臓器(眼、口腔、鼻咽頭、喉頭、食道、生殖器)に水疱やびらんが発生する。その類天疱瘡で、眼病変があるものを眼類天疱瘡と呼んでいる。
明らかな病因・病態は不明だが、角膜上皮基底膜の接着成分に対する自己抗体(BP180、インテグリンβ4)を持つ患者が多いとされる。そのため、眼類天疱瘡は自己免疫疾患の一種と考えられている。高齢の女性に好発する。
眼類天疱瘡の症状
軽度充血を主体とする慢性結膜炎(FosterⅠ期)
↓進行するとFosterⅢ期(FosterⅡ期は結膜円蓋部の短縮)
- 瞼球癒着や睫毛乱生(結膜嚢が次第に短縮する)
- 角膜への侵入
- 鼻涙管の閉塞
- 涙液分泌減少(ドライアイ)(結膜杯細胞及びマイボーム腺の消失)
↓進行するとFosterⅣ期
角膜表面が角化し皮膚のようになる
Fosterの眼類天疱瘡臨床分類
Ⅰ期:慢性結膜炎、結膜組織の瘢痕性変化
Ⅱ期:結膜円蓋部の短縮
Ⅲ期:瞼球癒着、角膜への血管侵入、睫毛乱生、涙液分泌減少
Ⅳ期:眼表面(角結膜上皮)の角化
眼類天疱瘡の診断
両眼性に角結膜上皮の慢性炎症が生じ、緩徐に角結膜の瘢痕性変化が進行することから疑う。抗緑内障点眼薬など上皮毒性を有する点眼薬の長期投与によって生じる偽眼類天疱瘡との鑑別に注意する。
偽眼類天疱瘡
上皮毒性を有する薬剤を長期間使用することによって生じる。抗緑内障薬が誘因として多い。防腐剤を含む点眼薬の長期間使用や、点眼麻酔薬の常用でも生じる。初期は点状表層角膜炎、進行すると眼類天疱瘡と同様に結膜嚢短縮、瞼球癒着を生ずるようになる。
眼類天疱瘡の治療
保存的治療が主体で、局所的に低濃度ステロイド点眼を用いて消炎を図る。その他、ドライアイや睫毛乱生の管理も行う。もし眼類天疱瘡の患者に白内障手術などの外科的治療を行う場合には炎症の増悪に注意する。術当日からステロイド、シクロスポリン、シクロフォスファミドなど内服を用いて消炎しておく必要がある。術後、癒着や角化が急激に進行する場合がある。もし急性増悪した場合には、ステロイド内服で治療する。
培養結膜上皮シート移植は、急性増悪に伴う遷延性角膜上皮欠損や、瞼球癒着の進行防止に有用である。
参考文献
- 今日の眼疾患治療指針第3版
- 眼科学第2版
- 第126回日本眼科学会総会