スポンサーリンク
進行性網膜外層壊死(PORN)とは
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因で生じる壊死性ヘルペス性網膜症である。炎症の首座は網膜外層で、急速に進行する。その上、治療には抵抗性であり、極めて予後不良の疾患である。AIDSや骨髄移植後、悪性リンパ腫など免疫不全状態の患者にみられる。発症者の多くはCD4陽性Tリンパ球が50/mm2以下で、帯状疱疹の既往を持つ例が多い。
進行性網膜外層壊死(PORN)の症状と所見
自覚症状は壊死する部位によって視力低下や視野狭窄をきたす。眼底所見は、眼底周辺部の網膜深層に孤立性の白色斑が多発性に出現し、1-2週間で急速に拡大癒合する。発症時に片眼性であっても、最終的には多くが両眼性となる。
進行性網膜外層壊死(PORN)の診断
診断のポイントは下記の通り
- 網膜出血や血管炎の軽度であるが、網膜外層を中心とした広範な網膜黄白色病変を呈すること
- 前房、硝子体の炎症所見に乏しいこと
- 数週間と急速に進行すること
- 免疫抑制状態にあること
- 前房水や硝子体液を用いたPCR検査でVZVのDNAを検出できること
※前房内に炎症細胞がなかったり、治療開始されている症例ではDNA検出率は低下する。
※VZVは潜伏感染しているため、血清抗体価検査は診断上意味がない。
進行性網膜外層壊死(PORN)の治療
確立された有効な治療法はない。アシクロビル単剤は無効で、アシクロビル、ガンシクロビルやホスカルネットナトリウム水和物のうち2剤併用が推奨されている。これら2剤を全身投与する、あるいは1剤を全身投与し、もう1剤を硝子体内投与する。
処方例)全身投与の場合
- デノシン点滴静注:初回投与は1回5㎎/kgを1日2回で、維持投与は1回5㎎/kgを1日1回
- ホスカビル注:初期投与は1回60㎎/kgを1日3回で、維持投与は1回90㎎/kgを1日1回
処方例)硝子体内投与
- デノシン点滴静注:1回400μg/0.1ml(2000μgまで増量可)週1回
- ホスカビル注:1回2400μg/0.1mlを活動期には2回/週、それ以後は1回/週投与
参考文献
関連記事
硝子体・網膜・脈絡膜とその疾患このページでは網膜・脈絡膜とその疾患についてのリンクを掲載しています。...