目の病気

網膜芽細胞腫

網膜芽細胞腫とは

乳幼児の網膜に生じる悪性疾患で、5歳までに95%が診断される。15000~23000出生に1人の頻度で、現在の日本では年間70~80人が発症している。片眼性が6割ほどである。眼球内に限局していれば、5年生存率は95%以上期待できる。しかし、眼球外に浸潤している場合や、転移を生じると予後不良とされる。

網膜芽細胞腫の原因は13番染色体長腕にあるRB1遺伝子の変異で、このRB1遺伝子は細胞分裂の制御に重要とされるRB1タンパクを産生する。

網膜芽細胞腫の症状

初期の病巣は無症状のため発見は困難であるが、黄斑部に生じると視力不良による斜視を認めることがある。多くは眼内で網膜芽細胞が大きくなり、白色瞳孔を呈して発見される。さらに進行すると、腫瘍による水晶体圧排や血管新生緑内障による眼圧上昇で、角膜混濁や疼痛などの症状を認めるようになる。腫瘍が眼球外に浸潤すると眼球突出を、それ以外に転移すればその臓器に関する症状が出現する。

網膜芽細胞腫の診断

眼球摘出をした場合には組織診断が可能だが、眼球温存治療の場合は臨床診断で治療を開始する。臨床診断の根拠となるのは、

  1. 眼底検査:眼底で血管に富む白色隆起病変がある。
  2. 画像検査:超音波検査で実質性腫瘍があること、腫瘍内に石灰化を伴うこと(ただし、5歳以上は石灰化が乏しいことが多い)を確認する。可能ならMRIを追加する。腫瘍はT1強調画像で脳実質と同程度、T2強調画像で軽度低信号を示し、造影効果を示す。CTは石灰化の描出に優れるが、被曝を伴うため必須ではない。
  3. 蛍光眼底造影検査:腫瘍血管の描出、蛍光漏出が明らかで、活動性の評価に優れる。ただし、通常全身麻酔が必要で、初期診断のために追加して行う意義は低い。
  4. 血液検査:転移を伴えば血清乳酸脱水素酵素(LHD)、NSEが上昇しうる。
  5. その他:骨髄検査、髄液検査、全身CT、核医学検査など

網膜芽細胞腫の治療

眼内に限局する初期病変で、視機能も期待できる場合には、眼球温存治療を行う。しかし、眼内に限局していても、進行期の場合には、視機能が期待できないが、家族の希望があれば温存治療を行う。温存治療の初期治療として全身化学療法を行い、その後地固め療法を行うのが一般的とされる。

具体的な眼球温存治療は

  1. レーザー治療:腫瘍径3㎜程度までの腫瘍は、赤外線レーザーの直接照射による光凝固を行い、90%程度の局所制御が可能とされる。黄斑部に腫瘍があれば先に化学療法を先行することが推奨されている。
  2. 冷凍凝固:赤道部より周辺の腫瘍径3㎜程度の腫瘍が治療対象となる。レーザーと同様、90%程度の局所制御が可能とされる。
  3. 小線源治療:腫瘍厚5㎜以下、横径15㎜以下で、視神経乳頭から離れている限局腫瘍が対象となる。
  4. 全身化学療法:眼球内進行期腫瘍に対して第一選択となる。3剤併用(オンコビン、パラプラチン、ベプシド)の化学療法が広く行われている。単独治療で治癒するのは10%以下だが、腫瘍の縮小・活動性の低下は期待できる。
  5. 選択的眼動脈注入:カテーテルを用いて眼動脈へ薬剤を投与する。局所投与のため、全身投与による副作用を軽減することができる。
  6. 硝子体注入:全身化学療法と併用することがある。ただし、効果は硝子体播種に対してのみで、網膜病変に対する効果は期待できないとされる。
  7. その他にも、結膜下注射、放射線外照射などが行われることがある。

ただし、下記の場合は眼球摘出術が推奨される。

  1. 視機能が期待できない
  2. 緑内障や蜂窩織炎様炎症を伴う
  3. 前房浸潤や虹彩浸潤を伴う
  4. 眼球外浸潤を疑う

なお、眼球摘出後の加療については、視神経断端陽性、強膜外浸潤を認める場合には絶対適応となり、全身化学療法と放射線治療を行う。また、著明な脈絡膜浸潤、篩状板を越える視神経浸潤などは転移の相対的リスクがあるため相対適応となる。

網膜芽細胞腫の予後

日本など先進国では、5年生存率は95%以上期待できる。二次がんは10歳以降に発症することが多い。眼内温存に関しては、眼内初期病変(T1)で90%以上、眼内進行期病変(T2)で約50%、T3では10%程度とされる。なお、視機能に関しては黄斑部に及んでいるかどうかに依存する。

参考文献

  1. 今日の眼疾患治療指針第3版

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