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色覚異常と色覚検査 | オンライン眼科
眼科で行う検査

色覚異常と色覚検査

色覚異常と色覚検査についての記事

色覚異常

色覚異常の分類

先天色覚異常には先天赤緑色覚異常(日本人男性の5%、女性の0.2%)、先天青黄色覚異常、杆体1色覚、S錐体1色覚がある。錐体細胞のL錐体(長波長感受性錐体)、M錐体(中波長感受性錐体)、S錐体(短波長感受性錐体)のいずれかの欠損あるいは機能不全で、それぞれの錐体視物質ができないため生じる。

L錐体に異常があれば1型色覚異常、M錐体なら2型色覚異常、S錐体なら3型色覚異常という。1型色覚と2型色覚の頻度が高く、これらを総称して先天赤緑色色覚異常、3型色覚を先天青黄色覚異常という。

1つの錐体細胞に異常があるが、3種類の錐体細胞を持つ場合は異常3色覚と呼ぶ。赤錐体に異常があれば1型3色覚という。1種類の錐体細胞を持っていない場合には2色覚と呼びます。赤錐体に異常があれば1型2色覚という。1種類の錐体細胞のみを持つ錐体一色覚、全ての錐体細胞を持たない桿体一色覚などがある。

また、L錐体とM錐体はX染色体上、S錐体は常染色体上に遺伝子が存在する。先天色覚異常は進行はほとんどしないが、有効な治療方法はない。

一方、後天色覚異常は後天的な疾患により、錐体細胞あるいは色覚の伝達経路が障害されることで生じる色覚異常である。先天色覚異常と異なり、病状が進行すれば症状は悪化しうる。また、治療は原疾患の治療を行う必要がある。

色覚異常の各論

1.先天赤緑色覚異常

先天赤緑色覚異常の原因と分類

先天赤緑色覚異常はL錐体視物質もしくはM錐体視物質が欠損するために生じる。

先天赤緑色覚異常の遺伝形式と頻度

L錐体とM錐体はX染色体上にあるため、遺伝形式はX連鎖性遺伝である。日本人男性の約5%、女性の約0.2%にみられる。2型3色覚が最も多い。

先天赤緑色覚異常の症状

赤緑の間隔はL錐体とM錐体の反応の差で生じるため、先天赤緑色覚異常では赤緑の感覚が生じない。異常3色覚であっても、LとL’、MとM’では反応の差は小さいため赤緑の感覚は弱くなる。以上から1型であっても、2型であっても見え方は大きく変わらない。また、色覚以外の視機能に異常はなく、進行もしない

先天赤緑色覚異常の診断

仮性同色表、色相配列検査で判断できるが、厳密にはアノマロスコープを用いる。

2.先天青黄色覚異常

先天青黄色覚異常の原因と分類

S錐体視物質が産生されないことが原因となる。

先天青黄色覚異常の遺伝形式と頻度

S錐体視物質をコードする遺伝子は第7番染色体上にあり、その遺伝形式は常染色体優性遺伝である。頻度は稀で、13000~65000人に1人とされ、性差もない。

先天青黄色覚異常の症状

白と黄色、青と緑の識別が難しいことで発見される。石原色覚検査表では発見されにくく、本人も自覚しにくい。症状の進行はない。

先天青黄色覚異常の診断

標準色覚検査表第1部および第2部の一部の表で青黄異常を検出できる。パネルD-15テストでもフェイルであれば型判定が可能とされる。また、S錐体系網膜電図において消失型となる。

3.先天全色盲

錐体が1種類もしくは全くない場合に全色盲となる。

A.杆体1色覚
杆体1色覚の原因と分類

杆体のみ機能している状態である。

杆体1色覚の遺伝形式と頻度

常染色体劣性遺伝で、頻度は約0.025~0.0055%と稀である。

杆体1色覚の症状

完全型では幼少期から視力障害があり、0.1程度の低視力、眼振、羞明、昼盲がある。成長につれて羞明や眼振は改善することが多い。薄暗い方が視力は向上する。視野では中心暗点がある。Purkinje移動は見られない。不完全型では視力は0.2~0.3程度で、残余色覚を認める。

杆体1色覚の診断

仮性同色表の石原色覚検査表、標準色覚検査表第1部においてデモンストレーション表の第1表のみ判読できる。パネルD-15テストでは、混同軸が2型色覚と3型色覚の中間のscotopic軸に一致する。アノマロスコープでは、極端に急峻な傾きとなる。

また、全視野刺激網膜電図では、杆体反応は正常だが錐体反応は検出できない。不完全型では錐体ERGで減弱した反応を検出できる。

B.S錐体1色覚
S錐体1色覚の原因と分類

S錐体と杆体のみが存在する。

S錐体1色覚の遺伝形式と頻度

L錐体とM錐体遺伝子はX染色体上に存在するので、X連鎖性遺伝である。頻度は10万人に1人以下である。

S錐体1色覚の症状

視力は0.2~0.3程度で、残余色覚を認める。進行性の視力障害や黄斑変性、羞明、昼盲、眼振をきたす場合もある。

S錐体1色覚の診断

杆体1色覚と類似している。鑑別は色刺激ERGで錐体機能が正常であることを確認する。

4.後天色覚異常

原因は網脈絡膜疾患、視神経疾患、中枢疾患など多岐に渡る。

後天色覚異常の原因疾患

  1. 網脈絡膜疾患:網膜色素変性、網膜剥離、錐体ジストロフィ
  2. 視神経疾患:視神経炎、緑内障、球後視神経症、優性遺伝性視神経萎縮
  3. 中枢疾患:後頭葉の障害で起こりうる。
  4. その他:薬物性(サントニン)、心因性
後天色覚異常の症状

網脈絡膜疾患、視神経疾患の多くは軽い障害で青黄異常が目立ち、進行すると赤緑異常が加わり、最後は全色盲となる。

大脳性色覚異常は、色名呼称障害、色失語、色失認などがある。このような色覚異常に加えて、色覚中枢と隣接する相貌失認や地誌的失見当識を合併することがある。

薬物性は回虫の駆除薬であるサントニンによって、一過性の黄視症などの色視症がある。

心因性の場合は心因性の視野障害や視力障害を伴うことが多い。

後天色覚異常の診断

仮性同色表の標準色覚検査表第2部、色相配列検査のパネルD-15テスト、100 hueテストを用いる。片眼性の可能性もあるため、片眼ずつ行う。後天色覚異常では視野障害を合併することも多いため、色覚検査の信頼性が乏しい場合もある。心因性の場合は再現性のない結果になることが多い。

色覚検査

0.視力検査

仮性同色表は視力が0.1あれば読めるため、まず視力検査を行う。ここで弱視等がないかをスクリーニングする。

1.仮性同色表

仮性同色表は色覚異常の有無をスクリーニングできる。仮性同色表には種類があり、現在使えるのは石原色覚検査表標準色覚検査表第1部先天異常用(SPP1)、東京医科大学式色覚検査表(現在入手はできない)があり、これら2種類以上の検査表を組み合わせて行うことが望ましい。

A.石原色覚検査表

数字表、曲線表、環状表はそれぞれ検査表と分類表で構成されている。先天赤緑色覚異常の判定に用いる。

検査手順

  1. 検査表には数字が書いてあることを教え、そこに書かれていない表も混じっていることを伝える。
  2. 第1~15表まで見えた数字にを順番に読んでもらい、その後に環状表を第38から32表にかけて後ろから順番に、丸の中でどの部分が繋がっていないかを筆を使って示してもらう。
  3. 最後に分類表の数字を読んでもらう。

※数字が読めない幼児では曲線表、環状表を用いる。

数字表

検査表は下記1~4で、残り第16~19表は分類表である。

  1. 正常色覚者・赤緑色色覚異常者の両者とも読める表(第1表)
  2. 正常色覚者と赤緑色色覚異常者とで読み方が異なる表(第2~8表)
  3. 正常色覚者のみが読める表(第9~12表)
  4. 赤緑色色覚異常者のみが読める表(第13~15表)

検査の注意事項

  1. 検査表には直接素手で触れない(検査表が変色するため)。
  2. 検査は患児一人と検査員で行う。
  3. 自然光の下、窓がなければ昼白色・昼光色蛍光灯(500lux以内)下で行う。
  4. 検査表は75㎝離した状態にする。
  5. 石原色覚検査表Ⅱ国際版38表では、環状表は3秒以内、曲線表は10秒以内に返答してもらう。とはいえ、時間内に答えられなくても、ゆっくりなら解答できる子どももいるため、そこは臨機応変に対応する。判読に時間がかかる場合は色覚異常の可能性を疑い、成長してからでも良いので再検査をする。

検査結果の判定

  • 第1表のデモンストレーション表は色覚異常の有無を問わず読めるはずなので、読めない場合は視力低下を伴う器質的な疾患や詐病、心因性視覚障害を疑う。
  • 「石原色覚検査表Ⅱ国際版38表」、「24表」では誤読数が4表以下で正常となり、誤読数が5~7で色覚異常疑い、8表以上で色覚異常とする。
  • 石原色覚検査表Ⅱ国際版38表の場合は、必ず環状表もあわせて計2票のうちの誤読総数から判定を行う。
  • 「14表」では誤読数が1表以下では正常、2表以上で色覚異常疑いとなる。
  • 幼児で数字が読めなければ、環状表のみで判定が可能で、その場合は環状表の誤読表数が2表以上で色覚異常疑いとされている。
  • 分類表では1型か2型かの判定を行う。2桁の数字の左右どちらの数字を読むことが多いかで型判定を行う。正常色覚であれば左右両方とも読めるが、1型では右側の、2型では左側の数字を読むことができる。
  • 型の最終判定は後述のアノマロスコープで行う。

B.SPP標準色覚検査表第1部(SPP1)先天異常用

検査条件は石原色覚検査表と同様に行う。先天赤緑色覚異常の判定に用いる。

検査手順

  1. SPP1には最初にデモンストレーション表が4表あり、その次に検出表が10表、最後に分類表が5表ある。
  2. 色覚異常の有無を問わずに読めるはずの第1表を間違えれば、その他疾患を疑う。
  3. 第5~19表には2桁の数字が書かれている。正常色覚者には多くの場合2桁の数字が読める。さらに、正常色覚者に読みやすいと言われる数字の方がはっきりと見えるが、その一方で、色覚異常者では異常者に読みやすいと言われる数字のみが見えることが多い。
  4. 2桁の数字を読んでもらい、片方のみを解答すればその数字を記載し、2桁のうち両方とも読めればより読みやすい数字を聞き、それを記載する。両方の数字に差がない場合は正当とする。

検査結果の判定

  • 検出表で8表以上が正答であれば正常とする。
  • 分類表はどちらの数字が読めるかで1型とⅡ型の型判定を行うが、SPP1は非常に優れており、95%はアノマロスコープと結果が一致すると言われている。
  • SPP1は軽度の色覚異常では判定が正常となることもあるため、SPP1だけでスクリーニングは行わず、石原色覚検査表など他の検査と必ず組み合わせて行う。
  • デモンストレーション表No.2、No.3が読めない場合は全色盲、3型色覚、後天異常を疑う。

C.標準色覚検査表第2部(SPP2)後天異常用

後天異常の判定に用いる。

検査手順と検査結果の判定

  1. SPP2には最初にデモンストレーション表が2表あり、その次に検出表が10表がある。
  2. それぞれの数字にBY印字(青黄異常)、RG印(赤緑異常)、S印(杆体異常)が付いていて、どの数字が読めないかで判定する。
  3. 後天色覚異常はあくまでも正常色覚の感度低下であるため、いずれかの色覚異常が選択的に現れるとは限らない

これらスクリーニング検査の型判定の精度は100%でないため、正確な診断書が必要であったり、本人や家族の希望があればアノマロスコープができる施設へ紹介する。

2.色相配列検査

色相配列検査では15個の色票からなるパネルD-15テストや、より細かな色の識別評価を行うFarnworth-Munsell 100 Hue testがある。

A.パネルD-15テスト

パネルD-15テストは強度の色覚異常か中等度以下の色覚異常の程度判定ができる。

検査の方法

  1. 検査時は直接色票に素手で触れないように、検査者は手袋を、患児には筆などをもってもらう。
  2. 色票の裏には数字が書いてあり、この数字が見えないように、順番がばらばらになるように患児の前に置く。
  3. 基準色票に一番近い色票を15個の色票の中から選び、選ばた色票を検査者が木箱の基準色票のとなりに並べる。
  4. 次にその色に近い色票を残り14個から選び、木箱に順に並べていく。

検査結果の判定

  • 木箱に並んだ色票の裏の数字を順番に書き、それらを線で結ぶ。
  • 正常:円形
  • 横断線が2本以上あればFail、それ以外はPassとする。
  • 仮性同色表で明らかな異常があり、本検査でPassであれば中等度以下の色覚異常であり、Failであれば強度の色覚異常を考える。
  • Failの場合、1型とⅡ型色覚で線の方向が異なるため、型の判定ができる。

この検査をPassしても色覚異常がないとは言えない。

B.100hueテスト

色識別能力の判定を行う検査で、後天色覚異常の評価にも用いることができる。

85個の色相キャップがあり、パネルD-15テストと同様な4つの箱に固定キャップととともに分けられている。やり方もパネルD-15テストと同様である。両隣のキャップ番号の差の和を偏差点として算出し、総偏差点から色識別能力が判定できる。

3.ランタンテスト

信号灯視認に関わる職種の適性試験として活用されていた。JFCランタンは赤、緑、黄の発光ダイオードによる光が上下に2灯あり、9通りの組み合わせで1回2秒間点灯する。被験者は上から色名を答え、上下ともに正しければ正答とする。

判定は3通り以下の間違いでパスとする。この検査では、パネルD-15テストで中等度以下と評価された色覚異常を弱度と中等度に分類するために行われる。

4.アノマロスコープ

アノマロスコープは先天色覚異常の型分類を確定診断するための検査である。

黄(589nm)の単色光と、赤(671nm)と緑(546nm)の混色光を等色させる検査である。3型色覚の診断には使えないが、その他1型2色覚・3色覚、2型2色覚・3色覚、杆体1色覚の診断を行うことができる。

参考文献

  1. 今日の眼疾患治療指針第3版
  2. あたらしい眼科Vol.37,No.7,2020

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