昨日、『漢方は目の病気に効くのか?』という記事を書きましたが、今日はその続きです。
論文の内容
今回の研究は2014年に東北大学の高山真先生らが発表したものです。
タイトルは『The Traditional Kampo Medicine Tokishakuyakusan Increases Ocular Blood Flow in Healthy Subjects(健常人に漢方の当帰芍薬散を使うと目の血流が増加する)』です。
健常人とタイトルにはありますが、対象になっているのは盲目だが他に病気がない人13名が対象となっています。
「目の血流が増加するとはどの程度血流が良くなるのか?」結論にはこうあります。
The aim of this study was to examine the effects of oral administration of kampo medical formulas on ocular blood flow (OBF). A crossover protocol was used to randomly administer five grams of yokukansan, tokishakuyakusan (TSS), keishibukuryogan, or hachimijiogan to 13 healthy blinded subjects (mean age: 37.3 ± 12.3 years). The mean blur rate, a quantitative OBF index obtained with laser speckle flowgraphy, was measured at the optic nerve head before and 30 minutes after administration. Blood pressure (BP) and intraocular pressure (IOP) were also recorded.No significant changes were observed in mean BP or IOP after the administration of any of the kampo medical formulas. There was a significant increase in OBF 30 minutes after administration of TSS (100% to 103.6 ± 6.9%, ). Next, TSS was administered to 19 healthy subjects (mean age: 32.0 ± 11.0 years) and OBF was measured before and 15, 30, 45, and 60 minutes after administration. Plain water was used as a control. OBF increased significantly after TSS administration compared to control and also increased from 30 to 60 minutes after administration compared to baseline
論文の前提
- 5gの抑肝散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、八味地黄丸をランダムに投与
- 投与前後の視神経円板の血流を測定、同時に血圧、眼圧に上昇がないかも確認
- 当帰芍薬散については追加で19名の健常者に対して、投与前、投与15,30,45,60分後の血流を測定
論文の結果
- 当帰芍薬散投与30分後血流は増加
- 追加の実験で当帰芍薬散投与30〜60分後には血流が有意差を持って増加
という結果になっていました。
僕が昨日書いた記事で取り上げた島根大学のSeiji Hayasakaらが2012年に発表した論文では「八味地黄丸は網膜血流を増加させる」とありました。
ただし、この論文では八味地黄丸の効果は確かめられなかったので、まだまだ漢方が確実に良いとは言えなさそうですが、一定の効果はありそうです。
そして、この論文の注意点は健康な人での研究であることです。
もちろん、目の血行障害による病気を持つ患者さんにもある程度効果はあると思われますが、それはあくまでも推論になってしまいます。
また、この論文では短期的な副作用として、投与後の血圧と眼圧の上昇を取り上げていますが、長期的な副作用については言及していません。
漢方の代表的な副作用として間質性肺炎など、全身への影響もありますから長期的な使用は注意が必要ですね。
参考文献
Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine 2014, 2014