網膜とその疾患

小口病

小口病とは

先天夜盲の一型で、症状は幼少時から青年期の間に発症する夜盲とされる。原因遺伝子としてはSAG(日本で多い)RHOK/GRK1の2つが知られている。遺伝形式は常染色体劣性遺伝である。

はげかかった金箔様の色調の眼底所見を呈することがある。小口病患者の眼底では後極部を除き、網膜全体にギラギラしたような反射が見られ、血管が少し浮いているように見える。網膜血管や視神経乳頭に異常は認めない。この特徴的な眼底の色調は数時間暗順応させると消失し、正常の色調となる(水野―中村現象)。

小口病の夜盲の原因は視細胞自体にあり、視細胞が光刺激で興奮した後の回復過程に著しい遅延があるためとされる。

以前は小口病は停止性の疾患で、進行性の網膜変性などは起こさないとされてきた。しかし、1998年にNakazawaらが日本人に多いSAG遺伝子の1147delA変異は小口病だけでなく、網膜変性をきたしうることを報告した。その後、2019年にNishiguchiらはSAG遺伝子変異を有する日本人患者で、成人期以降に進行性の編成を示すことがあり、まれに網膜色素変性様の進行性網膜変性を示す患者がいることを示した。

上は暗順応前、下は暗順応後
Research Gate HPより引用

診断はこの特徴的な眼底所見で強く疑うが、他の疾患との鑑別のため網膜電位図(ERG)を行う。小口病では杆体の反応が消失または減弱しており、flash ERGで陰性の波形を呈する。錐体系ERG、フリッカー応答は正常である。

 

右のE-Hが小口病のERG
Reshearch Gate HPより引用

網膜電図(ERG)網膜電図(ERG)は前眼部・中間透光体が混濁して眼底が透見できない疾患の網膜機能など、様々な疾患に有用な検査です。この記事ではそんな網膜電図(ERG)について解説しています。網膜電図(ERG)について知りたい方は必見です。...

眼底所見が暗順応で正常化するように、ERGでも波形が正常化するが、正常化までは長時間かかる。小口病を疑うならば網膜が正常な色調であっても、ERGを施行すれば所見が得られる可能性がある。小口病単体であれば予後良好で、現在治療方法は存在しない。

参考文献

  1. 黄斑疾患診療AtoZ
  2. 眼科学第2版
  3. あたらしい眼科 Vol.42, No.3, 2025
  4. Molecular genetics of Oguchi disease, fundus albipunctatus, and other forms of stationary night blindness: LVII Edward Jackson Memorial Lecture
  5. Congenital stationary night blindness: an analysis and update of genotype-phenotype correlations and pathogenic mechanisms
  6. Electrophysiological findings in patients with Oguchi’s disease
  7. Oguchi disease: phenotypic characteristics of patients with the frequent 1147delA mutation in the arrestin gene
  8. Phenotypic Features of Oguchi Disease and Retinitis Pigmentosa in Patients with S-Antigen Mutations: A Long-Term Follow-up Study

関連記事

硝子体・網膜・脈絡膜とその疾患このページでは網膜・脈絡膜とその疾患についてのリンクを掲載しています。...

オンライン眼科のサポート