勉強用

緑内障概論

緑内障とは

日本緑内障学会のガイドライン(第4版)によると、緑内障とは、

 

視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である

 

とされています。

緑内障はどのくらいの頻度でなるの?

2000年9月から2001年10月に行われた多治見スタディの調査により、緑内障は40歳以上の20人に1人、70歳以上では10%以上に見られることは分かりました。その詳細は下記に記載します。

なお、年少者の正常眼圧緑内障(NTG)の報告もあるので、40歳未満が緑内障を発症しないわけでなく、この多治見スタディ自体が40歳以上を対象にした調査であったというだけです。

多治見スタディによる病型別緑内障の内訳
 原発開放隅角緑内障 3.9%(うち正常眼圧緑内障3.6%)
 原発閉塞隅角緑内障 0.6%
 続発緑内障     0.5%

緑内障は遺伝する!?

緑内障はその遺伝子が報告されており、 MYOC(1997年報告)、WDR36(2005年報告)、OPTN(2002年報告)などですが、その他にも候補となる遺伝子は多くの報告があります。

緑内障の検査

緑内障診察の大まかな流れ

緑内障患者の89%は発見されておらず、未治療であるとされています。緑内障かどうかは目の奥にある視神経の形から判断します。視神経の形から緑内障が疑わしい場合は視野検査を行います。

しかし、視野検査では異常が検出されない”preperimetric glacoma”という概念もあるため、視野検査のみを過信してはいけない。それらを踏まえて緑内障診察で行う検査は下記の通りです。

検診

  • 眼底写真
  • 眼圧検査

眼科ではそれらに加えて

  • 細隙灯顕微鏡検査
  • 眼圧検査
  • 隅角検査
  • 眼底検査
  • OCT検査
  • 視野検査 

これら検査以外にもエコー検査(UBM)や前眼部OCTで隅角が閉塞しているかどうかを見ることもあります。

細隙灯顕微鏡で見ること

細隙灯顕微鏡は眼科の検査では必ず使われる機械です。この細隙灯顕微鏡から得られる緑内障の所見を見ていきましょう。

①角膜

緑内障の診察では角膜変性、浮腫、混濁、角膜径、角膜後面沈着物を観察し、緑内障の診断の材料としています。また、緑内障タイプによっては下記のように特徴的な角膜所見があります。

  • Axenfeld-Rieger症候群:後部胎生環とそれに向かう虹彩癒着がある。
  • Haab striae:発達緑内障で角膜径の拡大によりDescemet膜が破裂することで見られる。
  • ICE症候群:虹彩角膜内皮症候群のこと、虹彩と角膜内皮細胞が障害され、細隙灯顕微鏡で角膜内皮面の微小な凹凸を認める。
  • Peters異常:角膜中央部のBowman膜とDescemet膜が欠損し、角膜混濁と菲薄化を生じる。

②前房

前房深度を観察し、van Herick法を用いて分類します。前房深度が角膜厚の1/4以下なら閉塞隅角の危険性があります。もし閉塞隅角の危険性がある場合は隅角鏡を用いて詳細を確認したり、前眼部OCT等で実際の前房深度を観察することもあります。閉塞隅角の場合は基本的に散瞳剤は禁忌です。

③虹彩

虹彩委縮、瞳孔偏位、落屑、虹彩後癒着、新生血管、結節などを観察します。

  • 虹彩委縮:ヘルペス性ぶどう膜炎、Fuchs虹彩異色虹彩炎など
  • 落屑:落屑症候群、アミロイド緑内障など
  • 虹彩後癒着:前房内炎症、瞳孔ブロックなど
    結節:肉芽腫性ぶどう膜炎、ICE症候群など
    新生血管:眼部虚血

④水晶体

水晶体偏位、白内障、水晶体厚、水晶体振盪を観察します。

  • 水晶体脱臼:眼外傷、落屑症候群、Marfan症候群などに合併し、瞳孔ブロックなどで眼圧上昇を生じる
  • 白内障:白内障で水晶体厚が増加すると、閉塞隅角の原因になる

⑤視神経乳頭

緑内障診断で非常に重要です。緑内障において視神経乳頭診察が重要である理由は「視神経乳頭障害は視野障害に先行する」からで、その陥凹・乳頭の比(cup-to-disc;C/D比)は正常で0.4までとされています。

視野障害の頻度はC/D比が0.4を超えると5%程度となり、それ以上ではより高頻度に視野障害が出現します。つまり、理論的にはC/D比>0.4ならば視野検査をするのが望ましいといえます。

また、視神経乳頭のリムの広さはISN’Tの法則に従います。この法則は正常のリムの広さは下方(Inferior)、上方(Superior)、鼻側(Nasal)、耳側(Temporal)の順に広いという法則です。その頭文字をとってISN’Tの法則と呼んでいます。この法則と差があるなら緑内障の恐れがあります。その他にも乳頭出血があると74%は緑内障であるとされています。

視神経乳頭所見から鑑別すべき疾患

1.SSOH(Superior Segmental optic Hypoplasia)
 :上方視神経乳頭低形成のこと。鼻側階段はなく、Mariotte盲点に連なる楔型の視野障害をきたす。PPAはないことが多く、視野障害進行することは少ない。日本人の有病率は0.3%とされる。

2.傾斜乳頭
 :視神経乳頭が上下方向に傾斜している。鼻側階段はなく、乳頭に連なるような楔型の視野障害をきたす。

3.視神経乳頭小窩
 :視神経乳頭に先天的に小窩がある場合にもNFLDが生じることがある。時に漿液性網膜剥離を生じる。

隅角鏡で見ること

隅角は房水の流出路で、この隅角が広い・狭いが緑内障の分類および治療に重要となります。隅角鏡には拡大率の違い等で様々な種類があります。隅角鏡を用いた検査により、下記のShaffer分類あるいはScheie分類を行います。

隅角鏡の代表的な所見

  • 隅角結節:肉芽腫性のぶどう膜炎など。周囲にPASを伴い、眼圧上昇の原因になる。
  • 隅角色素沈着:落屑緑内障、色素緑内障、続発緑内障などでは線維柱帯に色素沈着を認める。Posner-Schlossman症候群では患眼の色素沈着は僚眼よりも軽い落屑緑内障ではSchwalbe線の上方に波状のSampaolesi線を生じる。
  • 隅角新生血管:糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などにより生じる。進行すると隅角が閉塞し、眼圧が上がることもある。血管の枝分かれ、周囲にPASがあるときは要注意。
  • 隅角離解:眼外傷やオペ後に生じることがある。
  • 周辺虹彩前癒着(PAS):虹彩根部が隅角に癒着し、テント状や台形状など突起状の形を呈する。閉塞隅角緑内障、ブドウ膜炎既往、続発緑内障、新生血管緑内障などで観察される。
  • プラトー虹彩:中央の前房深度は保たれているが、周辺隅角の狭小化を生じる。

Shaffer分類

Grade0:隅角の角度は0°で、閉塞隅角が生じている
Grade1:隅角の角度は10°で、閉塞隅角がおそらく起こる
Grade2:隅角の角度は20°で、閉塞隅角が起こる可能性がある
Grade3:隅角の角度は25~35°で、閉塞隅角は起こりえない
Grade4:隅角の角度は35~45°で、閉塞隅角は起こりえない

Scheie分類

wide open:開放隅角で隅角のすべての部位が確認できる
Scheie1:毛様体帯の一部が観察できない
Scheie2:毛様体帯の観察ができない
Scheie3:線維柱帯の後方半分が観察できない
Scheie4:隅角のすべての部位が確認できない

エコー検査(UBM)前眼部OCTで見ること

いずれも前房深度をより詳細に見ることができます。UBMは毛様体までの観察ができるが、前眼部OCTに解像度が劣ります。開業医で設置しているところは多くはなく、あくまで補助的なものであります。

※視野検査についてはかなり煩雑になることが予想されるので、また別ページで説明します。

治療

1.点眼治療

目標眼圧を決めるために数回分の眼圧を測定します。その目標眼圧には初期例は19mmHg以下、中期例は16mmHg以下、後期例は14mmHg以下とする方法と、無治療時の眼圧の20~30%下降させる方法があります。この2つから患者さんに合わせて適切な方を選択します。

目標眼圧を設定したら、点眼治療で使う目薬を選択します。多くの場合は第一選択としてプロスタグランジン(PG)関連薬を用いますが、アレルギーや副作用の問題等あれば他の種類の点眼薬を使います。

点眼薬開始後の眼圧下降と目標眼圧を照らし合わせ、眼圧下降の程度と視野の進行を確認します。異常がなければそのまま点眼を継続しますが、眼圧下降が乏しかったり、視野障害が進行している場合には点眼薬を追加することがあります。

ただし、点眼薬を正しく付けていなかったりすることもあるので、きちんと点眼できているかの確認は必要となります。プロスタグランジン点眼薬以外に使う点眼薬はβ遮断薬、副交感神経刺激薬、α2作動薬、炭酸脱水素酵素阻害薬などがあります。これら目薬について詳しくは『これでわかる!緑内障点眼薬』をご覧ください。

2.手術

緑内障手術は多岐に渡るため、患者さんの状態に応じて治療方法が選択されます。

レーザー虹彩切開術

レーザー虹彩切開術(LI)は非観血的で簡便な手術のため外来で可能です。主な適応として瞳孔ブロックに伴う閉塞隅角症があるが、前房が極端に浅い症例、角膜内皮が減少している症例、角膜混濁がある症例では避けるべきとされる。合併症として、一過性眼圧上昇、前房出血、白内障、再閉塞、水疱性角膜症などがある。

レーザー線維柱帯形成術

レーザー線維柱帯形成術(LTP)は線維柱帯にレーザーを照射し、主経路からの房水流出量の増加を図る。LTPにはアルゴンレーザーを用いるアルゴンレーザー線維柱帯形成術(ALT)とYAGレーザーを用いた選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)がある。適応には原発開放隅角緑内障、落屑緑内障、色素緑内障、瞳孔ブロック解除後の原発閉塞隅角緑内障、混合緑内障がある。

トラベレクトミー

トラベレクトミーでは新たにバイパスを作り、非生理的な房水流出路を作成する。トラベレクトミーは眼圧下降効果は優れる一方で、重篤な合併症が少なくないハイリスクハイリターンの手術である。適応は下記の通り。

トラベレクトミーの適応

  • 非観血的治療の効果不十分(点眼など)
  • 失明眼ではない
  • 目標眼圧が低い
  • 続発緑内障では原疾患の治療が十分に行われていること
  • 閉塞隅角緑内障では瞳孔ブロックの介助が行われていることと、水晶体再建術など他の術式では効果不十分と予測される場合
  • 発達緑内障では初回はトラベレクトミーを検討

トラベレクトミーが不成功に至るリスク因子は活動性のぶどう膜炎、血管新生緑内障、眼科手術既往(特に硝子体手術)、若年、有色人種、術前高眼圧には十分検討する必要がある。

トラベクロトミー

房水流出路を再建し、眼圧下降を図る治療である。

トラベクロトミーの適応

  • 発達緑内障
  • ステロイド緑内障
  • 落屑緑内障
  • 目標眼圧が高いPOAG
  • 一部のPACG

トラベクロトミーの非適応

  • 血管新生緑内障
  • 上強膜静脈圧上昇による続発緑内障
  • 隅角に炎症があるぶどう膜による続発緑内障
  • 目標眼圧が低いPOAG

その他にもレーザー隅角形成術、スーチャートラベクロトミー変法、隅角癒着解離術(GSL)、アイ・ステント、EX-PRESS手術、Baeveldtインプラント手術、周辺虹彩切除術などがある。

参考文献

  1. 日本緑内障学会ガイドライン(第4版)
  2. 日本視野画像学会HP
  3. どう診る?緑内障視神経乳頭
  4. クローズアップ緑内障診療

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学生時代より執筆活動を始め、現在まで500本以上の医療記事を執筆しました。現在は眼科医として勤務しながら、自身の記事をアップするため『オンライン眼科』を設立しました。お仕事依頼は問い合わせページからお願いいたします。