国家試験

第112回医師国家試験の眼科解説

今回の記事は第112回医師国家試験の問題を解説していきます。全10問を解説しています。

112A10

解答)b

解説)調節力の式は覚えましょう。調節力=1/近点距離(m) − 1/遠点距離(m)です。

この問題では調節力=1/0.25-1/0.50=4.0-2.0=2.0(D)、よって解答はbになります。

112A29

解答)b

解説)

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112A52

解答)d

解説)生石灰は水に溶けるとアルカリ性になります。そのことを知らなくても、涙液が㏗9からアルカリ性だと分かります。

目が酸・アルカリに曝露されると、その程度によっては結膜充血、角膜上皮欠損、壊死などをきたす恐れがある。

対応の基本は来院前に水道水で10分以上洗顔し、眼科来院時に生理食塩水などで10~20分かけて1~2L以上洗顔する。もし異物が残っていれば除去する。その後、点眼加療を行い、経過観察を行う。

上皮欠損が長期間残存する、角膜混濁がある場合は角膜移植等手術加療を検討する。

角膜化学熱傷について知りたい方はここをクリック

112B14

解答)e

解説)散瞳するとどうなるかを考えていただければ分かると思います。

目薬を用いて散瞳すると、ピントを調節できなくなります。つまり、視力や調節を必要とする検査はできなくなります。よって、abdはできません。

次に、散瞳する必要があるかどうかを考えます。散瞳することで目の奥(眼底)を見ることが可能になります。残る選択肢cとeのうち、cの隅角はレンズを目の表面に置くことで検査可能です。

一方で、eは下図のように、造影剤を用いて網膜血管支配域などを判別するために使います。つまり、eは目の奥を広く見えた方が良いため、eの検査前には散瞳する必要があります。よって、解答はeになります。

112C31

解答)a

解説)この疾患は下図の上の眼底写真で黄色の部分が病変で、下の光干渉断層計(OCT)は赤色の部位が病変です。詳しくは説明しても出題されたので割愛します。

年齢が50歳以上であり、黄斑部位のみに病変があるため加齢黄斑変性症を疑います。加齢黄斑変性症については医師国家試験はこれくらいの知識で解けます。

おそらく選択肢cの糖尿病で迷った方もいると思います。確かに、糖尿病の合併症である糖尿病網膜症という疾患も黄斑部に病変をきたします。しかし、糖尿病網膜症は網膜全体に病変をきたすことが、医師国家試験レベルでの鑑別ポイントかと思います。

本題に戻りますと、加齢黄斑変性症のリスクとして喫煙があります。よって、解答はaの喫煙になります。

加齢黄斑変性症について知りたい方はここをクリック、糖尿病網膜について知りたい方はここをクリック

112D01

解答)c

解説)

a.使いません。

b.水晶体に調節力はありますが、眼内レンズに調節力はありません。白内障手術では水晶体を取り除き、眼内レンズを入れるため調節力はなくなります。

c.屈折は水晶体と角膜がメインです。そのため、水晶体がない状態(無水晶体眼)は屈折点が網膜よりはるか遠方、つまり強度遠視になります。

d.眼内レンズは入れ替えることはまれで、入れ替える場合は眼内炎など感染がある場合である。劣化が原因で入れ替える症例はほぼない。

e.虹彩に固定せず、水晶体が包まれている水晶体嚢を残し、そこに入れることがほとんどである。

112D13

解答)bc

解説)

aはいわゆるドライアイです。よって、涙の量が不足する、あるいは質が悪化した場合に起こります。

bの樹枝状角膜炎はヘルペスウイルスが原因で、cの流行性角結膜炎はアデノウィルスが原因となる疾患です。

d,eはともにアレルギー性の疾患で、dはコンタクトレンズ等、eはアクネ菌の蛋白がアレルギーの原因として知られています。

ドライアイ樹枝状角膜炎流行性角結膜炎巨大乳頭結膜炎フリクテン性角結膜炎について知りたい方は各疾患をクリック

112D34

解答)d

解説)

充血、眼脂があればまず流行性角結膜炎を疑い、まず対応する必要があります。本症例では眼脂こそありませんが、流涙、同様の症状がいること、耳前リンパ節腫脹があり、流行性角結膜炎の確率が上がります。

流行性角結膜炎は感染力が強いため、感染予防が重要となります。接触感染するため手洗いは基本になります。その他にも、タオル等は共有せず、入浴も最後にするなどの工夫が必要です。よって、cは誤りです。

流行性角結膜炎は、学校保健法の第三種学校伝染病に指定されているので、学童の場合は、医師が周囲への感染力がなくなったと判断するまで出席停止することになります。

成人の場合は法的根拠はありませんが、職場の内規で出勤停止が義務づけられている場合や、伝染を防ぐために出勤停止を医師から指示される場合があります。

よって、この症例は強く流行性角結膜炎が疑われるため、選択肢eの”許可する”は正しくはありません。

その他の選択肢についてですが、aは頻回に洗顔をすることでより早く改善するというエビデンスはなく、むしろ、もう片方の眼に感染が伝播するリスクが上がります。

コンタクトレンズは治療時には絶対にしてはいけません。流行性角結膜炎で弱った目は二次感染を起こすリスクが上がります。そのための目薬を治療で使うくらいですから、感染の温床になるコンタクトレンズは装用してはいけません。

以上よりdが正解になります。

流行性角結膜炎について知りたい方はここをクリック

112E27

解答)c

解説)先ほどc31で簡単に説明しましたが、糖尿病が既往にあり、出血、白斑などの病変が網膜全体にあれば国家試験的には糖尿病網膜症を疑います。この症例はその条件に合致しています。

糖尿病網膜症と診断できたら、次にその分類を考えます。詳しくは『糖尿病網膜症(僕の記事です)』を読んでいただきたいのですが、この症例は増殖前糖尿病網膜症です。

その根拠は下図黄色矢印のように、フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)で、黒く抜けた無血管野を認めるためです。

この無血管野はそこに血流が届いていない、つまり、新生血管が生える恐れがあります。新生血管は作りたてなので、欠陥だらけです。新生血管から水が漏れたり、出血したりする恐れがあります。

そこで、無血管野を認める増殖前糖尿病網膜症では網膜光凝固を行います。網膜光凝固で無血管野を壊死させ、そこに新生血管が生えてこないようにします。よって、解答はcとなります。

糖尿病網膜症について知りたい方はここをクリック

112F62

解答)b

解説)白目(結膜)が真っ赤で、その他の症状・他覚症状が正常な場合は結膜下出血です。結膜下出血は1~2週間程度で元の状態に戻ります。特に治療は必要なく、経過観察を行います。

しかし、結膜下出血が1カ月以上続く場合は内科疾患などを疑う場合もあります。その際は内科等と連携して精査を行っていく必要があります。

結膜下出血について知りたい方はここをクリック

参考文献

厚生労働省HP

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